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≪サーバー保守学≫
医療現場のサーバーやシステム保守運用業務に役立つ情報を定期的に配信しています。

サーバ保守学(11)

(執筆者)亀田医療情報株式会社 塚田智 


みなさん、こんにちは、サーバー保守学第11回です。4月からの診療報酬改定は乗り越えましたが、新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、医療現場はより厳しい状況になってきました。職員の感染防止に最大限配慮しつつ、一般の患者さんの診療を継続しなくてはなりません。さらに、感染した患者さんは、これまで指定医療機関のみで対応していましたが、これからは一般病院でも感染患者を受け入れることになるでしょう。この状況がいつまで続くのか分からず負担と不安は増すばかりです。

そんな中で、厚生労働省は新型コロナウイルスに関する診療報酬の疑義解釈や対策を矢継ぎ早に発表しています。今回は、その中から情報システムに関係の深いオンライン診療について状況を確認し、システム管理者としてどのように対応すべきか考えてみましょう。

  

オンライン診療の時限的な措置に対応しよう


1.いまだけできるオンライン診療

遠隔診療という言葉は最近でこそ見聞きしますが、以前は非常に狭い範囲で認識されており、特に診療報酬では例外的な電話等再診に限定されていました。それが2018年4月からICTを利用したオンライン診療が認められるようになりました。詳しくは厚生労働省の「オンライン診療に関するホームページ」に情報があります。

これに加えて現在は時限的・特例的な措置があり「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」に情報があります。よほど急いで書いたのか、とても読みにくい文書です。簡単に言うと、この時期ならば、初診を含めて電話やオンラインによる診療が出来ます。また、院外処方箋を調剤薬局に送付し、オンラインで服薬指導し、薬品を配送出来るようになっています。つまり患者さんが自宅から出なくても、初診の受診から投薬までを完了できるようになったのです。これを詳しく解説しているサイトもありますので参照してください。


2.オンライン診療導入の注意点

時限的とはいえ診療報酬の仕組みが変わったのですから、みなさんの施設でも導入を検討することになるでしょう。オンライン診療のシステムを提供している会社は数社あります。それらには、診療予約、診療(WEB会議)、記録(電子カルテ連携)処方箋発行(調剤薬局連携)、診療費請求(クレジットカード決済)などのメニューがあります。料金は、どれも診療所向けが月額数万円程度と極端に大きな負担にはならないようです。

これらのサービスの中から自施設の運用に合ったメニューと料金を比較し、契約すべきサービスを決めていくことになります。検討にあたりシステム管理者として注意したいのは、以下のような点です。

○サービスの多くはクラウドで提供されており、利用にはインターネット接続が必要になる。

○オンライン診療のサービスと医事会計や電子カルテとの連携実績が少ない。

○使い勝手やサービスの質にばらつきがある。

もちろん、これ以外にも臨床上や請求上の考慮点もありますので、実際に開始するには十分な準備が必要です。


3.オンライン資格確認に合わせてネットワークを見直す

診療用のネットワークからインターネットに接続するのは、セキュリティの観点から案外と手間のかかるものです。本当に安全な接続とは何か、自施設ではどこまでのリスクを容認できるのか、議論するだけでも数か月は必要になります。さらに、それを実現するネットワークを設計して、具体的に設置するのにも数か月必要でしょう。加えて、2021年3月からはオンライン資格確認が実施されることが決まっており、これに対応するためのネットワークの変更も必要になります。

しかし、オンライン診療の時限的な措置に対応するために、これらを考慮して本格的なネットワークを構築している時間はありません。まずは、診療用のネットワークとは別にオンライン診療専用のネットワークを準備するのが良いと思います。導入の初期段階と位置付け、さらに絞り込んで、LTE接続できるタブレット端末だけで運用できる範囲を検討してみてはどうでしょうか。


4.既存システムと連携できるか確認する

電子カルテを運用している施設ならば、オンライン診療と電子カルテを連携して運用したいと思うでしょう。診療記録が無理でも、せめて予約情報くらいなら簡単に出来るだろうと思うところです。しかし実際には非常に制約が多く、なかなか実現できないものです。処方箋を調剤薬局に送付する機能や、クレジットカードによる決済も、オンライン診療のサービス会社が推奨している方法ならば可能ですが、自施設の既存システムを利用して自動化するには沢山の障壁があります。

これらの連携も今は割り切って、連携しない運用から始めて、徐々に連携できるようにしていけば良いでしょう。さらに、限定した運用を想定するのであれば、当面はオンライン診療の専用サービスでなく、一般的なWEB会議サービスを利用することも選択肢のひとつだと思います。また、時限的な措置では電話等の利用範囲も拡大されています。最低限の構成として、電話があれば患者さんが来院しなくても診療と処方はできるようになっています。自施設でいつまでに何が必要かを見極めて現実的な対応を検討しましょう。


電話による特例的な再診しかできなかった時代から、ICTの発展によりオンライン診療が可能になり、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかっけに時限的な措置とはいえ、その範囲がかなり拡大されています。今回の対応を機にオンライン診療への認知が進み、患者さんからは時限的な措置の終了後にも同等の利便性を要求されることでしょう。そのときに臨床や診療報酬の問題を解決しながら、医療提供者と患者さんの双方に有益なオンライン診療のシステムを提供できるようにICTのチカラを活かしたいものです。