人事労務 F/U NO.26

人事労務基礎講座 フォローアップ
≪判例・事例紹介、法改正情報など≫
主に医療機関や介護福祉関係にお勤めの方向けに、役立つ人事・労務関係の情報を定期的に配信しています。

パワハラ防止措置 何をすればいいの?

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


Q.パワハラ防止対策が義務化されたと聞きました。対策の必要性は感じていますが、どこから手をつければよいかわかりません。


A.パワハラ防止対策の取り組み内容は、たとえば表のようなものがあります。企業によって緊急性のあるもの、着手しやすいものなどから取り組み、継続して充実されていくことが重要です。

予防
するために
1.トップのメッセージ
・組織のトップが、パワハラは職場からなくすべきであることを明確に示す
2.社内ルールを決める
・就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する
・予防・解決についての方針やガイドラインを作成する
3.社内アンケートで実態を把握
・従業員アンケートを実施する
4.管理職向けの研修・一般社員向けの研修
・研修を実施する
5.社内での周知・啓蒙
・組織の方針や取り組みについて周知・啓発を実施する
解決
するために
6.相談窓口の設置、相談対応
・企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める
・外部専門家と連携する
7.再発防止のための取り組み
・行為者に対する再発防止研修等をおこなう

(1)措置防止が義務化

令和2年6月から(注1)、職場におけるパワハラを防止するために必要な措置を講じることが事業主の義務となっています。


(2)パワハラの定義

職場におけるパワハラとは、職場においておこなわれるA~Cまでの要素をすべて満たすものをいいます。

客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲でおこなわれる適正な業務指示や指導はパワハラに該当しません。
A.優越的な関係を背景とした
B.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
C.就業環境を害すること


(3)講ずべき措置

指針では、事業主は職場におけるパワハラを防止するため、次の措置を講じなければならないとしています。
① 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
② 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
④ ①から③までの措置と併せて講ずべき措置(プライバシー保護など)

ただ、これでは具体的にやるべきことがイメージしづらいので、厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル」にある「7つの取り組み」を紹介します。

上表のように、パワハラを予防するための取り組みを5つ、解決するための取り組みを2つ提示しています。

この順番で実施しなければならないというわけではありませんが、「①トップのメッセージ」や「③実態把握」などは早めに実施しておいた方が他の取り組みがスムーズに進むでしょう。

「②社内ルールを決める」において、就業規則に関連規定を設ける際は、服務規定としてパワハラの禁止、相談窓口、プライバシーの保護、不利益取扱の禁止などについて定めます。

また、パワハラをおこなった場合の懲戒処分についても定めておいた方が良いでしょう。

取り組みを実施した後は、再びアンケートなどで実態調査をおこなって効果を測定し、さらなる取り組みに活かしていきましょう。継続して充実させていくことが大切です。


(4)役立つ資料をダウンロード

厚生労働省のハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」のダウンロードコーナーでは、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」のほか、アンケートの例、管理職や社員向け研修資料、社内掲示用ポスターなど役立つ資料がダウンロードできるようになっています。


[脚注]

  • 注1)中小企業は努力義務、令和4年4月より義務化
(公開日 : 2021年06月21日)
今、医療業界の組織も装備すべき労働管理の基礎知識
人事・労務基礎講座I
迫る「働き方改革」に備え、医療機関や介護福祉関係で最も問題となる労働時間をはじめ、休日や賃金などの人事・労務の基礎知識を身につけていただけます。
今、医療業界の組織も装備すべき労働管理の基礎知識
人事・労務基礎講座II
医療機関や介護福祉関係でも関心の高い採用・配置転換から服務規律や安全衛生などの人事・労務の基礎知識を身につけていただけます。「働き方改革」にお備えください。