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≪サーバー保守学≫
医療現場のサーバーやシステム保守運用業務に役立つ情報を定期的に配信しています。
サーバ保守学(1)
(執筆者)亀田医療情報株式会社 塚田智
ITは、さまざまな機能やサービスを提供するコンピューター、すなわちサーバーの力によって支えられています。このため、ITをスムーズに機能させるためには、「サーバーが安定稼働していること」が前提なのです。重要な役割を担うサーバーの保守内容と、保守にあたっての注意点、重視すべき点について解説します。
保守業務の方針を決めて、多忙な仕事にメリハリをつける
1.保守業務はさまざまあり、システム管理者はいつも多忙
電子カルテを運用していると、さまざまな保守業務が発生します。日常的な運用だけでも、CPU使用率やディスク空き容量の確認、警告ランプ・外観の変化・異音・異臭などの確認、サーバー室への入室許可と記録、バッチ処理の実行と結果管理、サーバー室の室温や電源機器の管理、など少し考えただけで際限なく挙げることができます。
これに加え、医療現場からの質問に回答し、場合によっては現場を確認し、必要に応じて操作指導することもあります。その場で解決できないような事象なら、運用を変更することを前提に各部署との調整が必要だったり、機能を変更するためにマスターを変更することもあるでしょう。その機能確認やテストのためにベンダーや協力会社に質問や確認のやりとりも発生します。
2.さらに障害や更新が待ち受ける
突発的に、大規模で重大な障害で発生すれば、システムを一旦停止しサーバーを再起動し、その間は手作業による運用に切り替え、ベンダーに原因調査を依頼するなど、1分でも早く復旧するためにあらゆる手を尽くすことになります。復旧してもデーターの事後入力や、原因を究明し対策をまとめて院内で報告する義務もあります。
また計画的とはいえ、数年に一度は大規模なシステム更新があります。サーバーの入れ替え、業者選定、新機能の運用検討、データ移行や切り替え時の対応など、この期間のシステム管理者はシステム更新の責任者兼作業者として、休む暇がないほど忙しくなります。
3.保守業務にメリハリをつけよう
どんなに忙しくても保守業務の質を落とすことはできないでしょう。保守業務はもともとできて当然、できなければ批判を浴びるものが多いものです。これが夜間休日にも発生するのですから、全部を完璧に実施するのは大変難しく、現実的には不可能と言っていいかもしれません。
特に中小規模の病院の電子カルテシステムを数人のシステム担当者で保守しているとしたら、全体として保守業務の質を確保しつつ、何かを重視し何かを切り捨てるメリハリが必要になってくるでしょう。
では、何を重視し、何を切り捨てるべきか。もちろん、病院の運営方針や、システム担当者の人数によって、選択は異なりますが、1つの方向性として日常的に頑張るか、数年に一度頑張るかを選択してみてはどうでしょうか。
4.日々の積み重ねか、数年ごとのジャンプアップか
日常的に頑張るとは、導入時や更新時の作業量をできるだけ減らして、日常的に医療現場の意見を聞きながら、日々業務改善を積み重ねていく方法です。システム開発でいうところの「アジャイル」、あるいは一般的にいう「小さく生んで大きく育てる」ことです。導入時や更新時に完璧なシステム構築を目指すのではなく、その時点では作業量を考慮して、問題点は問題点と認識したうえで先送りし、運用しながら優先順を決めて着実に進歩させていくという方針で、ハードウェアの更新が少ないクラウド時代には馴染み易い方法だといえます。
数年に一度頑張るとは、導入時や更新時に合わせて数年に一度完璧に近いシステムを構築します。それに向けて日頃から次期システムの要件や期待する機能を決めておくなどの準備を重ねておく方法です。一旦稼働したら基本的には運用を変更しないで、医療現場からの要望は次の更新まで保持しておく。目先の成果にこだわらずにじっくり数年待ってジャンプアップで進歩させていく方針です。オンプレミスでサーバー更新が必要な場合はシステムのライフサイクルに合わせた有効な方法だといえます。
どちらを選択するかはあなたの考え次第です。システム管理者として自分を取り巻く環境を良く理解し、一番良い方法を選択してチーム内で議論を重ね、その結果を経営者に提案し、病院全体の方針として同意を得ておきましょう。