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≪サーバー保守学≫
医療現場のサーバーやシステム保守運用業務に役立つ情報を定期的に配信しています。

サーバ保守学(9)

(執筆者)亀田医療情報株式会社 塚田智 


みなさん、こんにちは、サーバー保守学第9回です。世間では新型コロナウイルスの話題が毎日トップニュースになっています。日本でも全国各地から感染例が報告され、クルーズ船でも多くの患者さんが発生しています。みなさんの医療機関でもさまざまな対応を迫られていることと思います。医療機関にはそれぞれに感染予防のマニュアルがあると思いますので、まずはマニュアルを遵守し対応することになるでしょう。その上で想定外の事態が発生したら、タイミング良く現場で判断して行動することが大切です。そのために日頃から基本的な知識を取得しておく必要があるでしょう。このあたりはシステム管理にも共通するものがあります。

今回は、感染症の指定医療機関ではない一般の医療機関で、感染症の疑いがある患者さんが来院した場合に備えて、医療機関の運用を一時的に変更することに対して、システム管理者としてどのような考慮点があるか考えていきましょう。

  

一時的な運用変更。システム管理で考慮すべきことは何か。


1.別室で診療するためにPCを増設する

感染症の疑いがある患者さんは、その他の患者さんと別の部屋で診療するでしょう。普段は別の用途に使っている部屋ならPCやプリンターを設置する必要があります。PCの予備はあるか、ネットワークは敷設されているか、PCのセットアップは業者なしでできるか、など確認しておきましょう。

平常時でも故障などに備えて、全数の数%程度は予備の機器が必要でしょう。移動しやすいようにノートPCを標準にしておくこともできます。ネットワークは将来的な利用も考えて事前に全室に敷設しておくべきでしょう。


2.普段は使わないPCやプリンターを使う

感染対策のために普段は使わない診察室が用意されており、事前にPCやプリンターが設置してある場合でも、普段利用していないPCが埃を被っていたり、プリンターのトナーがなかったり、電源やネットワークの配線が抜けていたりと、すぐには使えない状態である可能性があります。

普段は使わない診察室でも定期的に使ってみて、PC以外の機器や設備も含めて不具合が無いか確認しておきましょう。


3.消毒しやすい機器を準備する

感染予防のために診察室内の機器をすべて消毒する場合もあります。PCのキーボードや排気口など凹凸のあるものは消毒が難しく、ビニールでくるむなどの対応が求められる場合もあります。

ビニールで全体くるむのであれば、できるだけ小さなノートPCを用意しておくこともできます。独立したキーボードやマウスを使うのであれば、Buletoothなどの無線のものにして接続ケーブルを使わないようにしましょう。


4.新規の検査項目を追加する

感染症の判定には、新規の検査を依頼して結果を確認する場合があります。検査項目マスターの追加、依頼するセットの作成、検査結果の表示位置や色の指定、検査会社とのデータ交換の変更、などシステムで設定する必要があります。

普段からシステム管理部門で検査項目を追加できるようにしておきましょう。マスター全般については、業者に頼らずに職員のみでメンテナンスできる体制が望まれます。


5.通常の職員以外の人がシステムを使えるようにする

感染症の患者さんに対応するために、外部から一時的に医師や看護師を招聘することもあります。一時的なユーザーがシステムを使うためには、ユーザーマスターの登録、利用権限の付与、操作説明などが必要になります。

新規のユーザーがシステムを使えるようになるまでの手順を示したチェックリストが必要です。最低限の業務範囲に対応した操作マニュアルも準備しておきましょう。該当のユーザーがシステムを利用しなくなったら、忘れずに利用権限を削除しましょう。


6.利用権限の変更に対応する

一時的な対応には、通常時のユーザーの権限を拡大してシステムを利用することがあります。通常は代行入力していない職員が代行入力する、検査結果を参照できるユーザーを増やす、口頭指示で入力したオーダーを指示者以外が承認する、などが考えれます。一時的にしてもユーザーにどこまでの権限を与えるべきか人事部門との確認も必要です。

ユーザーの権限変更はシステム管理者が操作することも多いでしょう。必要に応じてタイミング良く変更したいですが、権限の変更が承認されるルールを知っておかないと、言われた通りに変更して不適切な権限を設定してしまうこともあります。通常のルール以外で変更した場合は、誰からの指示だったのか記録を残しておきましょう。


新型コロナウイルスの発生源と言われる中国武漢では、2週間ほどで1,000床規模の病院を2つ建設するなど信じられないスピードで対応しているようです。日本では病院建設までは不要でしょうが、せめて情報システムの対応はスピード感を持って対応したいものです。日本では感染症の対応で多くの人が外来受診してサーバーに負荷がかかる、というような事態にはならないと思いますが、一時的な運用変更がある可能性を考慮して準備しておきましょう。

また、感染拡大の影響を受けて日本でも多くの人が集まる会議の中止や、テレワークによる在宅勤務を推奨する会社がでてきました。医療機関でいえば、オンライン診療ができればある程度の対応が可能と思います。残念ながら現状ではオンライン診療はそこまで適用範囲が広がっていません。次に同じようなことがある場合に備えて、システム管理者としてはオンライン診療の基盤になる外部とのネットワーク構築を進めておく必要があると思います。

(公開日 : 2020年03月01日)