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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.23 ニプロ株式会社
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 2020年度3月期時点の総資産(=負債と純資産の合計)は8,319億円で、対前年度▲140億円の減少となっています。
- そのうち、負債合計は6,706億円(対前年度▲34億円)、自己資本(純資産)は1,612億円(対前年度▲106億円)です。総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
- 負債が減少しましたが、それ以上に自己資本(※自己資本=純資産としています)が減額したため、財務体質のシンボルである自己資本比率は、対前年度▲0.9ポイントとなり、19.4%にさがってしまいました。
- 厚労省が発表している医薬品・医療機器産業実態調査によると、資本金規模が200億円以上(ニプロ株式会社の資本金は844億円)の医療機器製造販売業の自己資本比率の平均値は45.8%(2018年度)となっています。平均値を大きく下回る水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は、対前年度+26億円の増加で、1,342億円でした。売上高営業利益率は対前月比+0.4ポイントとなり、6.0%に上昇しています。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+10億円の増加で、234億円の黒字でした。売上高経常利益率は対前年度から横ばいで5.3%を維持しています。
- 前述調査によると2018年度の売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ8.1%、6.8%です。それらと比較すると、どちらの利益率も平均値を下回る水準です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 採算構造のシンボルである損益分岐点比率は、対前年度▲0.2ポイントとなり、82.6%に改善しました。しかしながら、前述調査による損益分岐点比率の平均値75.5%より低収益の水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は、対前年度▲1.04ヶ月と下がりましたが2.60ヶ月であり、判断基準値である1.50ヶ月を大きく上回る良い水準をキープしています。今のところ資金繰り面に不安はありません。
【総合評価】
- 売上高で対前年度+161億円の増収を確保する一方、変動費は+125億円の増加に留まりました。その結果、貢献利益は対前年度+36億円となり、固定費回収パワーは強化されました。売上高貢献利益率は30.3%で、前述調査による平均値27.6%を上回る水準です。しかし、対前年度▲0.3ポイントと、前年度より回収パワー効率は悪くなっています。
- 固定費は対前年度+26億円と増加したものの、それ以上の貢献利益の増加を確保した結果、採算構造(損益分岐点比率)は改善しました。
- 対前年度で増収増益を確保し、売上高経常利益率は5.3%とまずまずの経営成績です。
- 経常利益は増益でしたが、投資有価証券評価損などの特別損失の計上により、最終的な利益である当期純利益は赤字となり、財務面の自己資本(利益剰余金)は減少しました。
- なお、財務面の資産では、大幅に保有していた手元現預金を取り崩すことで、減価償却費を上回る有形固定資産への積極投資を行い、あわせて若干の負債返済を実施しました。
- これらの結果、前述調査との比較では各指標が平均値を下回っているものの、経営体質・財務体質はまずまずの成績をキープしています。
【その他】
- 新型コロナウイルスワクチンの大規模集団接種も始まり、よやくコロナ禍収束に向けて進みだしました。しかしながら、都市部においては、まん延防止重点措置、緊急事態宣言の延長など、まだまだ終わりはだいぶん先の話です。医療機関でのクラスター発生も依然として報道されています。感染防止と資金繰りに十分留意しましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
(公開日 : 2021年05月31日)