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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。

決算書の簡易診断 No.24 日本調剤株式会社

日本調剤株式会社 簡易B/S、P/L

【決算書の簡易診断とは】

  1. 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
  2. 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。


【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?

  1. 総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
  2. 2021年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)が対前年度+28億円と増えているのに対し、お金の運用である総資産(=負債と純資産の合計)は対前年度+7億円に抑え、負債合計を対前年度▲21億円と減らしています。
  3. その結果、財務体質を表す自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、対前年度+1.4ポイントで26.8%に改善しました。しかしながら、売上高全体の80%以上が調剤薬局事業を占める上場大手企業4社の自己資本比率の平均値35.7%(注1)を下回る水準(4社の中では3番手)です。
評価「可」

【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?

  1. 2021年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+5億円で76億円でした。売上高営業利益率は対前年度+0.1ポイントで2.9%に改善しています。
  2. 当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+10億円で84億の黒字です。売上高経常利益率は対前年度+0.3ポイントで3.0%に改善しています。
  3. 営業利益、経常利益のどちらも2期連続で改善しており、収益力の向上が伺えます。ただし、上述した上場大手企業4社の平均値(3.6%、3.8%)を下回る水準です。
評価「可」

【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?

  1. 損益分岐点比率は対前年度では▲1.1ポイントで83.0%に改善しています。2期連続の改善となっており、生産性が向上しています。ただし、上述した上場大手企業4社の平均値(78.1%)より採算性は悪い水準です。
評価「可」

【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?

  1. 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度▲0.03ヵ月で1.42ヶ月に下がっています。判断基準値である1.50ヶ月を若干下回っており、資金繰り面にはやや不安があります。上述した上場大手企業4社の平均値(1.57)よりも下回る水準です。
評価「可」

【総合評価】

  1. 2期連続の増収増益の良い経営成績です。対前前年同期では、変動費の増加(+74億円)以上の売上高の増収(+104億円)を確保し、貢献利益が増加(+30億円)しています。売上高貢献利益率は対前年度+0.4ポイントと改善しており、固定費回収パワーが向上しています。固定費の増加(+20億円)を上回る貢献利益の伸びを確保した結果、当期の経常利益は増益(+10億円)となりました。
  2. 財務面では、利益剰余金の厚みが増え(+28億円)、自己資本が増加(+28億円)しています。総資産の増加(+7億円)を抑えることで、負債を減少(▲21億円)させており、財務体質の改善を図っています。手元現預金月商倍率は基準値を下回っているものの、手元の現預金のストックを増やしており、今のところ問題ありません。
評価「可」

【その他】

  1. 新型コロナウイルスによる患者の受診抑制で医療機関の収入減が報じられる一方、上述の調剤薬局は増収増益を確保し、貢献利益率は17.7%と高い水準をキープしています。医薬品にかかわる貢献利益率のベンチマークとして参考にしましょう。

  2. [脚注]

    • 注1)著者調べ。大手4社(株式会社 アインホールディングス・株式会社メディカルシステムネットワーク・クオールホールディングス株式会社・日本調剤株式会社)の決算短信等(執筆時点の直近のもの)に基づく。

    会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。

(公開日 : 2021年06月30日)
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