ICT中級講座 F/U NO.26
メディカルICTリーダー養成講座【中級】フォローアップ
≪サーバー保守学≫
医療現場のサーバーやシステム保守運用業務に役立つ情報を定期的に配信しています。
サーバ保守学(25)
(執筆者)亀田医療情報株式会社 塚田智
みなさん、こんにちは、サーバー保守学第25回です。新型コロナウイルスの感染が再び拡大しています。医療機関によっては、ワクチン接種と感染者受け入れの両方に対応しているところもあるでしょう。オリンピックも始まり、夏休みにも入り、何かとイレギュラーな対応が多くなります。変化の多いときこそ業務改革のチャンスです。ITを活用して新しい業務フローを提案していきましょう。
さて今回は、前回に引き続きWindowsUpdateに代表されるOSの最新化について考えます。前回は、インターネット接続などシステム環境の変化、OSの更新ポリシーへの対応の、セキュリティ確保ためのOSの最新化の必要性を確認しました。今回は、医療機関の情報システムにおいて、OSの最新化を阻害する要因は何なのかを確認しましょう。
WindowsUpdate OSを最新化しよう(2)
1.OSの最新化を考慮していないシステム構成
医療機関の情報システムは、5年から7年の周期で全面的に入れ替えることを前提に一括して導入されることが多くありました。これは、電子カルテ、医事システム、その他の部門システムを連携するインターフェイスが独自規格になっているのが主な原因です。一部のシステムを入れ替えるだけでも、関連するインターフェイスを再構築する必要があり、コスト高になってしまうのです。また、密接に連携しているシステムを入れ替える時には一時的に運用制限や運用変更をしなくてはならず、その回数や期間を削減する、という目的もあります。
いちどきに全面的に入れ替えるため、医療機関では、一旦導入したシステムをできるだけそのままの状態で使い続けるように計画していました。外部環境の変化に影響されないで、システムを変更しないまま長期間使い続けることは、現在では難しいことです。しかし、医療機関の従来の情報システムは、すべてが施設内に設置してあり、外部と連携せず施設内で完結したシステムであったため、このような計画と実施が可能でした。
システムを変更しないという前提であったため、医療機関の情報システムは、OSの最新化を考慮しないシステム構成になっていました。ですが、前回説明したように外部環境は大きく変化しています。医療機関の情報システムも外部との連携が重要な要件になりつつあり、OSの最新化も必須になっています。
2.PCの構成管理ができない
業務で利用するPCは適切に管理し、有効活用するとともに、利用によるリスクを削減しなくてはなりません。そのためには、PCのスペック、導入されているOSやアプリケーションの種類とバージョン、利用できるユーザーや権限などを把握し、履歴を管理しなくてはなりません。さらに、運用を継続していくために、適宜適切にPCの管理情報を更新し、状況に合わせて設定を変更する必要があります。これらの管理をPCの構成管理と言います。
OSの最新化を考慮していないシステムでは、Windows Active Directoryのような、PCの構成管理のためのソフトウェアが導入されていないことがあります。この状態でPCの構成管理をするためには、PCがどのような状態にあるのかを確認するために、そのPCの配置場所まで行ってPCを操作し、手作業で管理台帳を作成する必要があります。これは手間のかかる作業です。一人のシステム管理者が手作業で管理できるPCは10台程度が限度であり、PCの構成管理を手作業で実施することは、ほぼ不可能だといえるでしょう。PCの構成管理ができないと、PCごとのOSのバージョンを確認できません。すると、どのPCのOSを最新化すべきか判断できません。つまり、OSの最新化にはPCの構成管理のソフトウェアが必要なのです。
3.アプリケーションがOSの最新化に対応していない
電子カルテや医事システムの多くは、OSの最新化に対応しています。つまり、最新のOSが発表される度に、ある程度の期間内にアプリケーションも変更され、最新のOSで利用できるようになります。しかし、アプリケーションの中には、OSの最新化に対応できないものがあります。古いアプリケーションでは、稼働するOSのバージョンが固定されていて、最新のOSではアプリケーションの動作保証ができないものがあります。あるいは、最新のOSに対応するのが1年以上後になる場合もあります。アプリケーションが最新のOSに対応出来ないのは、主に提供業者の事情によるものです。特に、医療機器と密接に連携しているアプリケーションは、対応が遅い場合が多いようです。
PCの構成管理が省力化されておらず、アプリケーションを自動的に配布できない場合には、最新のOSに対応したアプリケーションがあっても、それを利用できないこともあります。また、アプリケーションが更新され若干でも機能が変わることで、運用を変更する必要があれば、利用開始するまでに数か月の運用検討期間が必要になります。これらの準備が整いアプリケーションを配布できるまで、最新のOSに更新できないことになります。
今回は、OSの最新化を阻害する要因を考えました。次回は、OSの最新化を継続していくために、どのようなことを考慮してシステムを構築するべきかを考えましょう。