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準備を進めましょう!

令和4年に施行される法改正のポイント

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


令和4年がスタートしました。今年も労働関係法令の改正がおこなわれます。ここでは主な改正点を解説します。自社に必要な対策の準備を進めましょう。


令和4年より施行される法改正
1月 雇用保険法 マルチジョブホルダー制度(65歳以上のみ)
健康保険法
  • 傷病手当金の支給期間の通算化
  • 任意継続被保険者制度の見直し
4月 育児・介護休業法
  • 育児休業を取りやすい雇用環境の整備
  • (本人または配偶者の)妊娠・出産を申し出た従業員に個別の周知・意向確認を義務化
  • 有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件を緩和
女性活躍・ハラスメント規制法
  • パワハラ防止措置の義務化(中小企業)
  • 一般事業主行動計画の策定・女性活躍に関する情報公表義務を301人⇒101人以上規模へ拡大
年金改革法 60~64歳の在職老齢年金の支給停止基準を月額28万円⇒47万円に
10月 育児・介護休業法
  • 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
  • 育児休業の分割取得
健康保険法 短期育児休業の社会保険料免除要件を変更
年金改革法 101人以上の企業で働く短時間労働者も社会保険の適用対象に

1月マルチジョブホルダー制度

労働時間が短いために雇用保険の加入資格を満たさない65歳以上の労働者が、兼業・副業により2つの勤務先(注1)の労働時間を合計して要件を満たす場合に雇用保険に加入できる制度(「マルチジョブホルダー制度」といいます)が始まります。1つの事業所の所定労働時間が5時間以上20時間未満で、2つ合わせて20時間以上となる必要があります。

要件を満たすと必ず加入しなければならないわけではなく、本人の希望により、ハローワークに申出をおこなった日から加入することになります。

手続きは本人がおこないますが、会社は本人からの依頼により手続きに必要な証明(雇用の事実や所定労働時間など)をおこなう必要があります。
拒否したり、不利益な取り扱いをおこなうことは禁止されています。

4月育休の個別周知・意向確認

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た従業員に対して、育児休業制度など次の事項を個別に周知することが企業に義務付けられます。

  1. 育児休業(注2)に関する制度
  2. 育児休業(注2)の申し出先
  3. 育児休業給付に関すること
  4. 労働者が育児休業(注2)期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

また、個別に制度利用の意向確認をすることも義務付けられます。従業員に子供が生まれると知ったら、男性でも女性でも育児休業を取るつもりかどうか、企業側から聞かなければならないのです。

個別周知および意向確認の方法は、面談やメール、書面交付などが認められています。

漏れのないようにあらかじめ周知文書を準備しておきましょう。
意向確認の方法も決めておくと良いでしょう。

4月パワハラ防止措置(中小企業)

パワハラ防止措置を講じることが中小企業にも義務付けられます(大企業はすでに令和2年から義務化)。

パワハラに対する会社の方針を社員に周知したり相談体制を整備するなど、セクハラ防止措置と同様の内容を実施する必要があります。

厚生労働省のハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」のダンロードコーナーに、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」や社内アンケートの例、管理職や社員向け研修資料、社内掲示用ポスターなど役立つ資料があります。活用するとよいでしょう。

10月産後パパ育休(出生時育児休業)

通常の育児休業とは別に、子の出生直後8週間以内に4週間まで取得できる「出生時育児休業」が創設されます。女性であれば産後休業にあたる期間ですから、基本的に男性が取得する休業ということになり、「産後パパ育休」などと呼ばれています

現行の育児休業ももちろん出生直後に取得できますが、新制度では、より男性が取得しやすくなるようにさまざまな条件緩和がおこなわれています。

まず、休業の申出は2週間前まででかまいません(現行制度では1ヵ月前まで)。また、2回に分けて取得できるため、まとめて休むのが難しい場合でも繁忙期を避けて取得することが可能です。

休業中に一部就労することも認められています。ただし、労働者の意に反して働かせることがないよう、あらかじめ労使協定を締結した上で、労働者と使用者が個別に合意した範囲内で就業が可能になります。

なお、就業可能日等の上限は休業期間中の労働日・所定労働時間の半分までとなっています。

これまで男性の育児休業は数日程度というケースが多かったかもしれませんが、今後はまとまった期間の取得が増えると予想されます。
休業中に一部就労してもらう可能性があるのであれば、労使協定を締結しておきましょう。

10月育児休業の分割取得

これまで原則1回だった育児休業を、2回まで分割して取得できるようになります。男性の場合は「産後パパ育休」もあわせると最大4回の分割取得が可能になるということです。

また、保育所に入所できない等の事業があって1歳以降も育児休業を延長する場合についても柔軟に取得できるようになります。これまでは延長後の育児休業開始日は1歳時点、1歳半時点に限定されていましたが、改正後は開始日が柔軟化され、延長期間に夫婦交代で育児休業を取得できるようになります。

育児休業の管理が煩雑になる可能性があります。
また、本来は取得できるのに、上司や人事担当者が改正点を理解しておらず拒否してしまうなど、誤った取り扱いをしないよう注意が必要です。

10月短期育休の社会保険料免除要件

育児休業中の社会保険料免除のルールも変わることになりました。

現行法では、月末時点で育児休業を取得している場合に当月の社会保険料が免除される仕組みのため、例えば9/1~9/29など月末を除く月内で短期間の育児休業を取得した場合は社会保険料が免除されませんでした。改正後は2週間以上の育児休業であれば月内でも免除対象になります。

また、月末に1日だけ育児休業を取得して賞与の保険料免除を受けるといった行為を防ぐために、賞与については1ヶ月を超える育児休業のみ免除対象とすることになりました。

短期間の育児休業を細かく取得するケースが増えるかもしれません。保険料免除のルールを理解しておきましょう。

10月パートタイマーの社会保険、101人以上の企業も義務化

以下の要件を満たすパートタイマーについて、段階的に社会保険の加入が義務化されています。現在は従業員数501人以上の企業が対象ですが、10月以降は101人以上の企業も対象となります。

  • 週の所定労働時間20時間以上
  • 月額賃金8万8千円以上
  • 2ヵ月を超える雇用見込み
  • 学生以外

社会保険料の負担が増えることになります。対象者を洗い出して試算しておきましょう。

[脚注]

  • 注1)3つ以上の事業所で勤務している場合は、雇用保険に加入する2つの事業所を本人が選択します。
  • 注2)令和4年10月以降は、育児休業だけでなく産後パパ育休も含めます。
(公開日 : 2022年01月14日)
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