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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.32 日本光電工業株式会社
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
2021年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度+172億円となり、1,390億円に増加しました。負債合計は対前年度+80億円となり、540億円に増加しました。
一方、お金の運用先である総資産は対前年度+252億円となり、1,930億円に増加しました。
財務体質を表す自己資本比率(※純資産=自己資本としています)は、対前年度▲0.6ポイントで72.0%に下がっています。厚労省が発表している医薬品・医療機器産業実態調査による、資本金規模が50億~100億円(当企業の資本金は75億円)の医療機器製造販売業の自己資本比率の平均値61.9%(2019年度)と比べると、良い水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
2021年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+116億円の大幅増で271億円となりました。売上高営業利益率は対前年度+5.2ポイントとなり、13.6%に改善しています。
当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+135億円の大幅増益で、284億に増加しました。売上高経常利益率は対前年度+6.2ポイントとなり、14.2%に改善しています。
売上高営業利益率、売上高経常利益率のどちらも2桁の利益率を確保しており、収益力が大きく改善しています。前述した厚労省の医薬品・医療機器産業実態調査によると、売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は7.5%、7.5%となっており、どちらも大きく上回る良い水準です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
損益分岐点比率は対前年度▲11.1ポイントの大幅減で72.2%に下がっており、採算構造が改善しています。
前述した厚労省の医薬品・医療機器産業実態調査による平均値81.4%を下回っており、良い水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度+0.48ヵ月となり、1.84ヶ月に増加しています。
一般的な判断基準値である1.50ヶ月を上回る水準を回復しており、資金繰りの安全性が改善しています。
【総合評価】
新型コロナウイルス感染症の影響による生体情報モニタや人工呼吸器などの需要拡大が追い風となり、当企業の経営成績は良好となりました。2021年3月期の業績は、売上高、利益ともに過去最高を更新しています。
売上高が対前年度で大幅増収(+147億円)となる一方、変動費の増加(+18億円)を抑えた結果、固定費回収パワーである貢献利益は大幅増(+129億円)となりました。売上高貢献利益率は48.3%から51.2%に改善(+2.9%)しています。貢献利益が大幅増となるなかで、固定費を削減(▲6億円)したことで、経常利益は大幅増益(+135億円)となり234億円を確保しました。
採算面は、対前年度で大幅増収大幅増益となり、収益力・生産性ともに大きく改善しました。
その結果、財務面では、自己資金の源泉である利益剰余金の厚みが対前年度+153億円となり、1,238億円に増えました。退職給付に係る調整や保有有価証券の評価見直しなどにより、その他の包括利益が+19億円となった結果、純資産は対前年度+172億円となりました。一方、資金運用の総資産は、流動資産+271億円、固定資産▲19億円となり、対前年度差+252億円となりました。その結果、負債は+80億円となりました。負債増の主な原因は未払法人税(+56億円)で、外部からの調達資金である借入金の増加はありません。財務体質には問題ありません。
【その他】
2022年度の診療報酬改定が間もなく実施されます。薬価は▲1.35%、材料価格は▲0.02%のマイナス改定です。前フォローアップで取り上げているように、医薬品卸企業は軒並み業績が不振です。価格交渉への影響が懸念されますのでご留意ください。価格交渉の際には、各卸業者の貢献利益率などをメルクマールとして、毅然として取り組みましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。