会計力 F/U NO.38
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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.38 株式会社エスアールエル
【決算書の簡易診断とは】
実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
負債合計額が総資産額よりも小さいので債務超過ではありません。
2022年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度+45億円となり、348億円に増加しました。これに対し、お金の運用先である総資産は対前年度+138億円で、1,219億円に増加しました。
この結果、負債は対前年度+93億円で871億円に増加しました。
財務体質を表す自己資本比率(※純資産=自己資本としています)は、対前年度+0.5ポイントで28.5%に改善しています。まずまずの水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
2022年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+85億円で216億円に増加しました。売上高営業利益率は対前年度+3.2ポイントと改善し13.7%となりました。
当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+92億円の増益で、黒字額は227億円に拡大しました。売上高経常利益率は対前年度+3.5ポイントと改善し、14.5%となりました。
営業利益、経常利益のどちらも増加し、対売上利益率も改善しています。収益力は2期連続で向上しています。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
固定費の回収パワーである貢献利益は対前年度+162億円の大幅増となりました。一方、固定費は+70億円の増加に留まりました。その結果、損益分岐点比率は、対前年度で▲5.1ポイントの改善となり、53.2%に下がりました。採算構造は3期連続で改善しています。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度▲0.01ヵ月で0.07ヶ月に下がっています。手元現預金月商倍率は、判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回る危険な水準です。なお、親会社への預け金(103億円)を考慮すると、手元現預金月商倍率は0.85ヵ月となりますが、それでも基準値を下回っています。
【総合評価】
新型コロナウィルスの検査需要が追い風となっており、対前年度で増収増益の良い経営成績を収めました。売上高が大幅増収(+337億円)となるなか、変動費比率は下がっており、固定費の回収パワーである貢献利益は+162億となりました。貢献利益率は+4.6ポイントの大幅改善となり30.9%に上昇しました。固定費を+70億円の増加に留めた結果、当期の経常利益は+92億円の増益で227億円となりました。経常利益は3期連続で増加しており、直近4期中における最大利益を記録しています。損益分岐点比率は53.2%に大幅に改善されており、採算構造は問題ありません。
財務面では、利益剰余金の厚みが増え(+46億円)、自己資本は+45億円となりました。これに対し、資金運用の総資産は+138億円の増加となりました。現預金残高は+1億円とほぼ横ばいとなっており、増えた資金のほとんどが現預金以外の形で寝ています。総資産の増加を自己資本で賄いきれなかったので、負債は+93億円となっています。金融機関からの直接的な借入金はありませんが、+80億円は買掛金や未払金の増加によるものです。現預金残高が非常に少ないため、財務面に不安があり、資金繰りに注意が必要です。
【その他】
貢献利益率は30.9%と非常に高い水準をキープしています。検査薬や検査委託料などの交渉時のメルクマールとして参考にしましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。