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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.40 株式会社メディパルホールディングス
【決算書の簡易診断とは】
実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
負債合計額が総資産額よりも小さいので債務超過ではありません。
2022年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度+102億円となり、6,491億円に増加しました。これに対し、お金の運用先である総資産は対前年度+295億円で、1兆7,095億円に増加しました。
この結果、負債は対前年度+194億円で1兆604億円に増加しました。
財務体質を表す自己資本比率(※純資産=自己資本としています)は、対前年では横ばいで38.0%を維持しました。年商10億円以上の卸売業の2021年度の自己資本比率の平均値33.3%(財務省の法人企業統計調査による)を上回る水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
2022年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+70億円で456億円に増加しました。 売上高営業利益率は対前年度+0.2ポイントと改善し1.4%となりました。
当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+91億円の増益で、黒字額は620億円に拡大しました。 売上高経常利益率は対前年度+0.3ポイントと改善し、1.9%となりました。
営業利益、経常利益のどちらも増加しましたが、2020年3月期の水準を回復できていません。前述した法人企業統計調査によると売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ1.7%、4.4%です。それらと比較すると、どちらの利益率も低い水準です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
固定費の回収パワーである貢献利益は対前年度+32億円の増加となりました。一方、固定費は▲59億円の減少となりました。貢献利益増・固定費減の良い組み合わせとなった結果、損益分岐点比率は対前年度▲3.8ポイントの改善となり、71.5%に下がりました。しかしながら、前述した法人企業統計調査による平均値54.6%を大きく上回る水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度+0.06ヵ月で0.89ヶ月に上昇しました。前述した法人企業統計調査による平均値0.68ヵ月を上回る水準ですが、判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回る危険な水準です。
【総合評価】
経営成績は対前年で改善しているものの、新型コロナウイルス流行前の水準は回復できていません。対前年度では、売上高は増収(+798億円)し、固定費の回収パワーである貢献利益は+32億円となりました。貢献利益が増加する一方、固定費が▲59億円減少した結果、当期の経常利益は+91億円の増益で620億円となりました。増収増益で損益分岐点比率は71.5%に下がっており、採算構造は改善しています。
財務面では、利益剰余金の厚みが増え(+203億円)ましたが、保有株式の売却などに伴う「その他有価証券評価差額金」の減少(▲126億円)などにより、自己資本は+102億円となりました。これに対し、資金運用先の総資産は、流動資産(主に現預金と売掛債権)が増えたことで+295億円の増加となりました。自己資本の増加以上に総資産が増加した結果、負債は+194億円となりました。自己資本比率は横ばいを維持しており、財務体質はまずまずです。
【その他】
円安に伴う物価上昇などの影響を受け、次回の薬価改定時の医薬品などの価格交渉は一層厳しくなることが予想されます。医療機関への価格転嫁には十分気をつけましょう。貢献利益率6.6%が交渉時のメルクマールです。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。