会計力 F/U NO.43
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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.43 日本光電工業株式会社
【決算書の簡易診断とは】
実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
負債合計額が総資産額よりも小さいので債務超過ではありません。
2023年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度+174億円となり、1,564億円に増加しました。これに対し、お金の運用先である総資産は対前年度+172億円で、2,102億円に増加しました。この結果、負債は対前年度▲2億円で538億円に減少しました。
財務体質を表す自己資本比率(※純資産=自己資本としています)は、対前年度+2.4ポイントとなり74.4%に改善しました。厚労省が発表している医薬品・医療機器産業実態調査による、資本金規模が50億~100億円(当企業の資本金は75億円)の医療機器製造販売業の自己資本比率の平均値62.3%(2021年度)と比べると、良い水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
2022年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+39億円で310億円に増加しました。売上高営業利益率は対前年度+1.5ポイントと改善し、15.1%となりました。
当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+62億円の増益で、黒字額は346億円に拡大しました。売上高経常利益率は対前年度+2.6ポイントと改善し、16.8%となりました。
前述した医薬品・医療機器産業実態調査によると、売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は9.2%、9.6%となっており、どちらも大きく上回る良い水準です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
固定費の回収パワーである貢献利益は対前年度+69億円の増加となりました。一方、固定費は+7億円の増加となりました。貢献利益が固定費より増加した結果、損益分岐点比率は対前年度▲3.9ポイントの改善となり、68.3%に下がりました。前述した医薬品・医療機器産業実態調査による損益分岐点比率68.9%を下回る水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度▲0.15ヵ月で1.69ヶ月に下がりました。判断基準値である1.50ヶ月を上回っており、今のところ問題ありません。
【総合評価】
新型コロナウィルス感染症やウクライナ情勢により不安定な社会情勢であったものの、国内外での医療機器の需要回復に支えられ、経営成績は対前年度で増収増益の良い構図となりました。売上高は直近4期における最高値を記録しています。対前年度では、売上高は増収(+54億円)し、固定費の回収パワーである貢献利益は+69億円となりました。固定費の増加を+7億円に抑えた結果、当期の経常利益は+62億円の増益となり、346億円となりました。損益分岐点比率は68.3%に下がっており、採算構造はさらに改善しています。
その結果、財務面では、自己資金の源泉である利益剰余金の厚みが対前年度+184億円となり、1,422億円に増えました。自己株式の取得や為替換算調整などの結果、純資産は対前年度+174億円となりました。一方、資金運用の総資産は、流動資産+157億円(主な要因は有価証券+180億円)、固定資産+14億円となり、対前年度差+172億円となりました。その結果、負債は▲2億円の減少となり、財務体質もさらに改善しています。
【その他】
円安などに伴う物価上昇の影響で医療機関の負担は今後も増加することが予想されます。各業者の貢献利益率などをメルクマールとして、医薬品や医療機器などの価格交渉はしっかりと行いましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。