診療報酬深堀りニュース(2024年度改定関連)
看護必要度の見直しの影響は大きい
(執筆者)株式会社MMオフィス / 関東学院大学大学院非常勤講師 工藤高
前回改定のリバウンドが看護必要度要件見直し強化
2008年度診療報酬改定で、当時の増えすぎたとされた7対1入院基本料(現在の急性期一般入院料1、以下入院料1)に対する「刺客」的役割として登場し、以降は猫の目のごとく要件がクルクル変わるのが「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)である。前回2022年度改定では心電図モニターが除外され、「点滴ライン同時3本以上」は「注射薬剤3種類以上」に変更となった。
ところが2022年度改定後の調査結果によると、2014年の38万4500床をピークに減少傾向であった入院料1は、2022年7月1日時点では35万3100床と前年比で3300床(0.94%)増加していた。理由は、第一に新設の「急性期充実体制加算」の要件として、地域包括ケア病棟(以下、地ケア)の併設が不可とされたため、地ケアを入院料1に戻した病院があった。第二に「地ケア入院料2・4の200床以上病院において、院内転棟6割以上の場合は入院料を15%減算」が導入されたため、地ケアを入院料1へ戻したという、いずれも地ケア改定変更絡みが主な理由だと思われる。
そのリバウンドの施策が24年度改定での平均在院日数短縮化と看護必要度見直しになる。平均在院日数は「18日以内→16日以内」に短縮されたが、DPC病院では平均在院日数が11日台なので多くの病院では問題ないと思われる。入院料1の刺客的役割は看護必要度の評価項目であるB項目(患者のADL状況や意識レベル)の廃止になる。そして、「A項目(医学管理や処置等の実施状況)3点以上またはC項目(手術や検査の実施状況)1点以上の該当患者が20%以上」「A項目2点以上またはC項目1点以上の該当患者が27%以上」のダブルクリアが基準になった。さらに200床未満病院の基準を緩和する措置も廃止となるほか、A項目の「救急搬送後の入院」(2点)は「5日間→2日間」に短縮されるなどの大変更となった。
内科系で手術がないと看護必要度要件①20%以上が厳しい
グラフは(株)メディチュアが行った200床以上5病院における看護必要度シミュレーションである。改定前の28%以上基準が改定後の新基準だと、②A2点orC1点27%以上はクリアできても、①A3点orC1点20%はギリギリが多くなっている。特にA病院は①20%以上が17%と基準を満たしておらず、このままだと入院料1の取り下げを余儀なくされる。同院はケアミックス病院で入院料1が1病棟だけであり、1日入院単価も4.5万円と高くはない。外科系手術はほとんどなく、市中肺炎、誤嚥性肺炎、尿路感染症、慢性心不全の内科系の高齢者救急患者が大部分を占めている。これらの患者の「緊急に入院を必要とする状態」(救急医療管理加算を算定する患者)はこれまではA2点×5日間であったが、これが改定で2日間に短縮(▲3日間)された。看護必要度については本年9月まで経過措置があるが、それまでに要件を満たさない場合は病棟の再編成が必要になってくる。看護必要度B項目が対象となる入院料2・3にステップダウンするのか、あるいは新設の地域包括医療病棟入院料にするのか。A病院同様に悩ましい問題が発生する病院が出てくるのは確実である。
※ IQVIAソリューションズジャパン合同会社ユート・ブレーン発行「卸ニュース」2月号筆者連載を加筆訂正したものです
※ 本記事は「Obelisk -オベリスク-」の共通コンテンツ「工藤高の医療行動経済学」で配信しているものを一般公開したものです。