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《申請手続きを確認!》育児関連の2つの新しい給付金

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


本年4月より、雇用保険制度において育児関連の2つの新しい給付金が始まりました。1つは、出生後一定期間内に両親ともに育児休業を取得することを促進するため、育児休業給付の給付率を引き上げる「出生後休業支援給付金」です。

もう1つは、子供が2歳になるまでの期間、育児時短勤務を選択したことに伴う賃金の低下を補い、時短勤務の活用を促すための「育児時短就業給付金」です。これら給付金の内容、支給要件、申請の手続きなどについて見ていきましょう。



出生後休業支援給付金

「出生後休業支援給付金」は、現行の出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給を受ける者が、一定の要件を満たした場合に上乗せで支給される給付金です。

①支給額

育児休業給付金または出生時育児休業給付金では、休業開始から180日間は休業前の賃金(「休業開始時賃金日額」という)の67%が支給されます。出生後休業支援給付金では、これに加えて13%が支給されるため、合わせて80%になります。育児休業期間は社会保険料が免除されることなどから手取額で比較すると休業前の賃金のほぼ100%を受給できます。

育児休業中に賃金が支払われる場合、育児休業給付金等の額が減額されます。さらに育児休業給付金等が支給されないときは、出生後休業支援給付金も支給されません。

出生後休業支援給付金休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限) × 13%


図1:支給額のイメージ

②支給要件

まず、給付の前提となる出生時育児休業給付金と育児休業給付金は、(1)休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上または時間数が80時間以上の完全月が12ヵ月以上あること、(2)支給単位期間中の就業日数が10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること、などの支給要件があります。

出生後休業支援給付金は、これら土台となる給付の要件を満たす場合に上乗せで支給されますが、次の支給要件を満たす必要があります。

出生後休業支援給付金の支給要件

  • ① 同一の子について、育児休業給付金または出生時育児休業給付金が支給される育児休業を「対象期間(図2)」に通算して14日以上取得した被保険者であること。
  • 被保険者の配偶者が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと
  • 夫婦ともに育休14日以上
    ただし「配偶者がいない」「配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない」「配偶者が産後休業中」などの場合は配偶者の育児休業を要件としません。
図2:対象期間

③支給申請等の手続き

出生後休業支援給付金を受給するには、次のようなステップで手続きを進めます。

(1)休業開始時の賃金月額の届出

(2)育児休業給付の受給資格確認

(3)育児休業給付金(出生時育児休業給付金)の初回申請

(4)出生後休業支援給付金の支給申請

(2)~(4)の3つのすべての手続きが提出要件を満たす場合は、1枚の様式で一緒に申請することもできます。ただし、出生後休業支援給付金については、夫婦いずれかの休業が14日以上の要件をまだ満たしていない等の場合、(1)~(3)の手続きを先に終わらせ、(4)を後日単独で申請するということになります。この場合の提出期限は、「被保険者の育児休業開始から起算して4ヵ月を経過する日の属する月の末日まで」です。


育児時短就業給付金

「育児時短就業給付金」は、2歳に満たない子を養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下するなど一定の要件を満たしたときに支給される給付金です。

①支給額

支給対象月に支払われた賃金額(その月中に支払われた額をいい、臨時、3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合は、支払われた賃金の10%相当の額が支給されます。ただし、90%超~100%未満が支払われた場合は、開始時の賃金を超えないよう支給率が調整されます。

100%以上の賃金が支払われた場合や支給限度額(459,000円)以上の賃金が支払われた場合または支給額が最低限度額(2,295円)以下となる場合は、支給対象になりません。

育児時短就業給付金の支給額育児時短就業中の各月に支払われた賃金額 × 10%

②支給対象となる時短就業

2歳に満たない子を養育するために、被保険者からの申出にもとづき、事業主が講じた所定労働時間を短縮する措置をいいます。

1日の所定労働時間を短縮する措置に限らず、1週間当たりの所定労働日数を変更し、1週間当たりの所定労働時間が短縮される場合も含みます。また、被保険者が子を養育するために短時間正社員、パートタイマーに転換、転職したことに伴い、1週間当たりの所定労働時間が短縮されている場合も、給付の対象となります。

なお、「フレックスタイム制」「変形労働時間制」「裁量労働制」などの特別な労働時間制度の適用を受けている場合は、育児時短就業と認められないケースがあり、注意が必要です。

③支給対象者

この給付金は、「受給資格」の要件をいずれも満たし、「各月の支給要件」をすべて満たす月に支給されます。

(受給資格)

  • 2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者であること。
  • ② 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時間就業を開始したこと、または、育児時間就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上または80時間以上ある完全月が12ヵ月あること。

    (各月の支給要件)

  • ① 初日から末日まで続けて、被保険者である月
  • ② 1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
  • ③ 初日から末日まで続けて、育児休業給付または介護休業給付を受給していない月
  • 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない

④支給対象期間

育児時短就業給付金は、原則として「育児時短就業を開始した日の属する月」から「育児時短就業を終了した日の属する月」までの各暦月について支給されます。

⑤支給申請等の手続き

育児時短就業給付金はを受給するには、次のようなステップで手続きを進めます。

(1)時短就業開始時の賃金月額の届出
※支給対象となる育児休業から引き続き時短就業を開始した場合は届出不要。

(2)時短就業給付の受給資格確認

(3)時短就業給付の初回申請

(4)2回目以降の時短就業給付の支給申請

(公開日 : 2025年05月23日)
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