人事労務 F/U NO.74
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1.来年4月より徴収スタート 子ども子育て支援金制度
2.月給者は要注意! 最低賃金チェックツール
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
1来年4月より徴収スタート 子ども子育て支援金制度
子ども・子育て支援法などの改正法が、昨年6月に可決・成立しました。
多岐にわたる支援策の財源を確保するために「子ども・子育て支援金制度」という新たな仕組みが創設されており、2026年4月から徴収が始まります。
①健康保険料に上乗せして徴収
「子ども・子育て拠出金」と名前が似ているので混同されがちですが、それとは別の新しい仕組みです。従来からある「子ども・子育て拠出金」の方は、厚生年金保険料に上乗せして徴収されるもので会社負担のみ。本人負担はありません。
新たに始まる「子ども・子育て支援金」の方は、健康保険など公的医療保険の保険料に上乗せして徴収されるもので、会社負担と本人負担があります。
独身者や子どもがいない世帯など、直接的な恩恵が受けられない人にも一律に適用されるため、「独身税」と揶揄されることもあります。
なお、従来からある「子ども・子育て拠出金」が廃止されるわけではありません。
②2026年から3年かけて増額
新たに始まる「子ども・子育て支援金」の負担額は、2026年からの3年間で段階的に増額されます。
詳細はまだ公表されていませんが、負担額は医療保険の制度ごとに異なります。たとえば協会けんぽや健保組合などの場合、それぞれの収入によって徴収される額が変わるので、年収別の見込額は下表のようになります。
年収別の本人負担額(見込み額) (2028年4月~) |
|
年収 | 本人負担額 |
年収 200 万円 | 月 350 円 |
年収 400 万円 | 月 650 円 |
年収 600 万円 | 月 1,000 円 |
年収 800 万円 | 月 1,350 円 |
年収 1000 万円 | 月 1,650 円 |
(こども家庭庁の資料をもとに作成) |
③会社の負担額は
表の金額は本人負担分ですから、この金額を労使で折半するのではなく、会社もこれと同額を徴収されることになります。
たとえば、年収400万円の人は2028年4月から月650円徴収となっていますが、会社も月650円を徴収されるので合計で月1,300円の徴収額となります。年間で15,600円です。
2月給者は要注意! 最低賃金チェックツール
富山労働局は、労働者の月給が最低賃金を下回っていないかを簡単に確認できるチェックツールを作成しました。
①月給制は気付きにくい
最低賃金は時間額表示のみとなっていますが、時給制の労働者だけに適用されるのではありません。日給制や月給制の人でも、時間あたりに換算したときに最低賃金を下回る場合は違法となります。
時給制の場合は最低賃金を下回っていることに気がつきやすいのですが、月給制の場合は気がつきにくいものです。特に新卒初任給などは金額も低く、うっかり最低賃金を下回ってしまう可能性もあります。
また、手当が多いために手取り額が多くなっている場合も気付きにくいと言えます。
②最低賃金の計算に含めないもの
最低賃金の計算において対象となる賃金には基本給のほか役職手当や住宅手当など含まれます。ただし精皆勤手当、通勤手当、家族手当は除外されるため注意が必要です。また賞与や残業代も除外されます。
なお、固定残業手当は諸手当ではなく実質的に残業代ですから最低賃金の計算から除外されます。
③3つの数字で簡単チェック
チェックツールでは、以下の3つの数字を入力すると、時間あたりの額を表示してくれます。この額が最低賃金を下回っていないかを確認することで、違反の有無を簡単にチェックできます。
- 通勤手当などを除いた月給額
- 1日の所定労働時間
- 年間の所定労働日数
月給の最低賃金チェックツール(富山労働局)
●最低賃金・最低工賃(富山労働局)のページ
●月給の最低賃金チェックツール(Excelファイル)