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1.業務でのAI利用、規制すべき?
2.超入門版BCPシート(首都直下地震編)を公開
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
1業務でのAI利用、規制すべき?
業務にAIを活用する従業員が増えてきました。効率化できるのは良いのですが、リスクもあると聞きます。利用を禁止するべきでしょうか。
禁止しても従業員が勝手に使ってしまう可能性が高いでしょう。安全に活用できるルールを整えることが現実的です。
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AIは急速に浸透し、日常生活だけでなく仕事においても活用が広がっています。
日経BP総合研究所の調査によると、すでに半数を超える人が業務で生成AIを活用していると答えています。具体的な利用目的は、「プレゼンテーション・提案書」(82.4%)が最も多く、次いで「報告書」(76.7%)、「翻訳」(58.2%)が続きます。
こうした広がりの一方で、生成AIの活用にはリスクも伴います。たとえば、入力した情報がAIサービスの運営会社に保存され外部に漏れてしまう可能性や、生成した文章や画像をめぐる著作権侵害、そして誤った情報をそのまま活用してしまうといった問題が指摘されています。
① 禁止よりも「安全に使うルール」を
それでも、業務効率化の観点から生成AIは欠かせない存在となりつつあり、全面的に禁止するのは現実的ではありません。むしろ従業員が個々の判断で勝手にAIツールを利用してしまう可能性を考えれば、禁止ではなく安全に使えるようルールを整える方が現実的です。
利用者のリテラシーには個人差があるため、組織として最低限の基準を示しておく必要があります。
② 多くの企業でルールが未整備
では実際に、企業はどの程度ルールを整えているのでしょうか。
同調査によると、勤務先では生成AIの利用ガイドラインを「すでに策定している」と答えた人は38.7%にとどまっています。
すでに業務で生成AIを使っている人が半数を超えている状況を踏まえると、この数字は決して高いとは言えません。つまり、多くの企業では従業員が各自の判断で自由にAIを利用しているのが実態なのです。
③ ガイドラインの参考例
社内で生成AIの利用ガイドラインを作る際に参考にできるものとして、東京都デジタルサービス局「文章生成AI利活用ガイドライン」があります。
このガイドラインでは、職員が守るべきルールを図のように定めています。

特にルール1「機密性の高い情報を入力しない」については、情報の機密性をA/B/Cの3段階に分類し、どの情報が該当するかを例示。最も機密性が高いAランクには「個人情報」「契約関係情報」「訴訟・審査請求等に関する情報」などが含まれ、AIへの入力は禁止であることを明確にしています。
こうした仕組みを参考に、「個人情報」「顧客情報」「社外秘情報」など、入力してはいけない情報を具体的に示しておくことは最低限必要でしょう。
大切なのは、一律に禁止してしまうことではなく、どうすれば安全に使えるのかを考え、そのためのルールを整えることです。
2超入門版BCPシート(首都直下型地震編)を公開
自然災害などの緊急事態が起きた際、企業は損害を最小限に抑え、重要事業の継続や早期復旧を図ることが求められます。あらかじめ事業継続の方法や手段を取り決めておくBCP(事業継続計画)の策定は、企業にとって欠かせない取り組みです。
しかし、中小企業における策定率は低い水準にとどまっています。「時間が取れない」「具体的な進め方がわからない」などの理由から、必要性を感じつつも着手できない企業が多い状況です。
すぐ取り組める超入門版シート
こうした状況を踏まえ、東京商工会議所は首都直下地震を想定した「超入門版BCPシート」を公開しました。
最低限検討すべきポイイントを1枚のシートに整理できるもので、初めてBCPに取り組む中小企業でも短時間で形にできる点が特徴です。
入力用シートはこちら:https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1206988(東京商工会議所)




