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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.20 東邦ホールディングス株式会社
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 2020年度3月期時点の総資産(=負債と純資産の合計)は6,708億円で、対前年度+71億円の増加となっています。
- そのうち、負債合計は4,398億円(対前年度▲101億円)、自己資本(純資産)は2,310億円(対前年度+172億円)です。総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
- 負債減、自己資本増の相乗効果により、財務体質のシンボルである自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、対前年度+2.2ポイントと大きく改善し、34.4%に上昇しています。年商10億円以上の卸売業の2019年度の自己資本比率の平均値34.2%(財務省の法人企業統計調査による)を上回る水準に改善しています。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+18億円と増加し、176億円でした。
- 売上高営業利益率は対前月比+0.1ポイントとなり、1.4%に上昇しています。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は対前年度+23億円の増益で、237億円の黒字です。
- 売上高経常利益率は対前年度+0.1ポイントとなり、1.9%に改善しています。
- 前述調査によると2019年度の売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ0.5%、2.4%です。それらと比較すると、経常利益率がやや低い水準にあると言えます。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 採算構造のシンボルである損益分岐点比率は、対前年度▲1.4ポイントの改善となり、79.4%に下がっています。
- 生産性が向上しており、良い水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は、対前年度+0.02ヶ月で0.80ヶ月に上昇しましたが、1ヶ月を割る水準です。
- 判断基準値である1.50ヶ月の半分程度の水準で、現預金のストックにはやや不安があります。
【総合評価】
- 売上高の増収(+415億円)に比例して変動費も増加(+381億円)しました。
- 売上高貢献利益率は対前年度から▲0.1ポイント下がり、9.1%となりました。前述調査による平均値7.1%を上回る良い水準です。
- 固定費が増加(+11億円)しましたが、固定費回収パワーである貢献利益を増加(+34億円)させた結果、採算構造(損益分岐点比率)は改善し、当期の経常利益は増益(+23億円)となりました。
- 2020年3月期は対前年度で増収増益の良い経営成績でした。売上高に対する経常利益率は改善の余地があるものの、全体的に問題がありません。
- 財務面では、利益剰余金の積み上げ(自己資本増)により得た資金を使って負債(支払手形及び買掛金)を減らすことで、財務体質(自己資本比率)を改善させました。
【その他】
- 新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、ようやく事態収拾に向けての一筋の光が見えました。一般の方への普及はまだ先になりそうですが、一歩前進は喜ばしいことです。ただし、ワクチン接種を実施する医療機関には相応の負担が生じることが懸念されますので、収支のバランスには十分に注意しましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
(公開日 : 2021年02月27日)