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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.22 フクダ電子株式会社
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 2020年度3月期時点の総資産(=負債と純資産の合計)は1,687億円で、対前年度+78億円の増加となっています。
- そのうち、負債合計は443億円(対前年度+26億円)、自己資本(純資産)は1,244億円(対前年度+52億円)です。総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
- 負債の増額以上に自己資本の増額を確保したものの、負債の増加率の方が大きかったため、財務体質のシンボルである自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、対前年度▲0.3ポイントとなり、73.7%にさがってしまいました。厚労省が発表している医薬品・医療機器産業実態調査によると、資本金規模が10億~50億円(フクダ電子株式会社の資本金は46億円)の医療機器製造販売業の自己資本比率の平均値は47.6%(2018年度)となっています。平均値を大きく上回る水準となっており優秀です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は、対前年度+6億円の増加で、133億円でした。売上高営業利益率は対前月比+0.3ポイントとなり、10.0%に上昇しています。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+3億円の増加で、136億円の黒字でした。売上高経常利益率は対前年度から横ばいで、10.2%を維持しています。
- 前述調査によると2018年度の売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ7.0%、7.2%です。それらと比較すると、経常利益率は平均値を大きく上回る優秀な水準です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 採算構造のシンボルである損益分岐点比率は、対前年度+0.3ポイントとなり、74.8%に上昇しました。しかしながら、前述調査による損益分岐点比率の平均値78.5%を下回る水準となっており、問題ありません。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は、対前年度+0.09ヶ月で4.42ヶ月に上昇しました。
- 判断基準値である1.50ヶ月を大きく上回る優秀な水準で、資金繰り面に不安はありません。
【総合評価】
- 売上高で対前年度+36億円の増収を確保する一方、変動費は+15億円の増加に留めました。その結果、貢献利益は対前年度+21億円となり、固定費回収パワーが強化されました。売上高貢献利益率は対前年度から+0.5ポイントの改善となっており、40.6%に上昇しています。前述調査による平均値33.5%を上回る良い水準です。
- 固定費は対前年度+17億円と増加したものの、それ以上の貢献利益の増加を確保した結果、採算構造(損益分岐点比率)は改善しました。
- 新型コロナウイルスによる厳しい社会環境下にもかかわらず、対前年度で増収増益を確保しました。売上高経常利益率は10%超えをキープしており、大変素晴らしい経営成績です。
- 財務面では、負債が増加していますが、借入金など外部要因によるものではなく、未払法人税等や退職給付に内部要因によるものです。一方、純資産では、利益剰余金が1,185億円に増え、資本金の約26倍にまで積みあがっています。当期は自己資本比率が下がったものの、健全な財務体質です。
【その他】
- 新型コロナウイルスの猛威は収まらず、都市部においてはまん延防止重点措置に続き、再び緊急事態宣言も発令されるなど、一向に収束する様子が伺えません。対象地域の医療機関においては経営への影響も懸念されます。資金繰りと感染防止に十分留意しましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
(公開日 : 2021年04月28日)