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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.25 クオールホールティングス株式会社
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
- 2021年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)を対前年度+8億円と増やす一方で、お金の運用である総資産(=負債と純資産の合計)は対前年度▲23億円と減らしました。その結果、負債合計を対前年度▲31億円と大きく縮減させました。
- 財務体質を表す自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、対前年度+1.7ポイントで41.6%に改善しました。売上高全体の80%以上が調剤薬局事業によるものである上場大手企業4社の自己資本比率の平均値35.7%(注1)を上回る良い水準(4社の中では2番手)です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 2021年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度▲4億円で74億円に減少しました。売上高営業利益率は対前年度▲0.1ポイントで2.8%に下がりました。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度▲6億円の減益となりましたが、74億の黒字です。売上高経常利益率は対前年度▲0.3ポイントで4.6%に下がっています。
- 売上高営業利益率、売上高経常利益率のどちらも3期連続で悪化しており、収益力の低下傾向が伺えます。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 損益分岐点比率は対前年度では+3.0ポイントと上昇しましたが、64.9%とまずまずの水準を維持しています。ただし、3期連続の上昇となっており、採算性の低下傾向が懸念されます。
- 上述した上場大手企業4社の平均値(78.1%)よりも低く良い採算構造です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度+0.31ヵ月となり1.46ヶ月に増えました。しかしながら、判断基準値である1.50ヶ月を若干下回っています。上述した上場大手企業4社の平均値(1.57)からは大きく下回る水準です。
【総合評価】
- 対前年同期で見ると、売上高が減収(▲36億円)するなか、変動費で同程度の減少(▲36億円)を確保したことで、固定費回収パワーの貢献利益はほぼ横ばい(+0億円)となりました。しかし、固定費が増加(+6億円)したことで、経常利益は減益(▲6億円)となってしまいました。2021年3月期は減収減益の良くない経営成績 となっており、収益力・生産性の向上が課題です。
- 財務面では、自己資金の源泉で利益剰余金の厚みが増え(+23億円)ましたが、自己株式取得(▲16億円)で差し引き自己資本が+8億円と増加したのに対し、資金の運用で総資産を▲23億円圧縮した結果、負債を▲31億円減少させ、財務体質の改善を図っています。手元現預金月商倍率は基準値をやや下回っているものの、手元の現預金のストックを増やしており、今のところ問題ありません。
【その他】
- 上述の調剤薬局の貢献利益率は13.0%と高い水準をキープしています。医薬品にかかわる貢献利益率のベンチマークとして参考にしましょう。
- (注1)著者調べ。大手4社(株式会社 アインホールディングス・株式会社メディカルシステムネットワーク・クオールホールディングス株式会社・日本調剤株式会社)の決算短信等(執筆時点の直近のもの)に基づく。
[脚注]
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
(公開日 : 2021年07月31日)