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10月より大幅改正
育児休業中の社会保険料免除Q&A
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
育児介護休業法が改正され、今年10月より育児休業の分割取得や産後パパ育休(出生時育児休業)が始まります。この改正により、今後は短期間の育児休業を取得する人が増えるものと予想されます。
そこで、育児休業中の社会保険料免除のルールも、短期間の休業取得に対応したものへ改正されることになりました。新たな免除要件は今年10月1日以後に開始する育児休業等について適用されます。
育児介護休業法の改正にともない、育児休業中の社会保険料免除のルールも令和4年10月から変わることになりました。
主な改正点は、次の2点です。
1同月内に14日以上の育児休業を取得した場合も保険料免除(要件緩和)2賞与の保険料免除は1ヵ月超の育児休業のみ(厳格化)
ここでいう「育児休業」には、10月から新設される産後パパ育休や1歳以降の育児休業の期間も含まれます。
1「同月内に14日以上の育休」の場合も免除
現行法は、月末時点で育児休業を取得している場合に当月の社会保険料が免除される仕組みです。
たとえば、8月31日に1日だけ育児休業を取得した場合でも1ヵ月分の社会保険料が免除されます。しかし、8/1~8/30など月末を除く月内で短期間の育児休業を取得した場合は社会保険料が免除されません。
この不公平感を解消するために、改正後は同月内に14日以上の育児休業であれば月末を含まなくても免除対象とすることになりました。月末にたとえ1日でも育児休業を取得していれば免除対象になる点はこれまでと変わりません。
2賞与の保険料免除は「1ヵ月超」の育休のみ
毎月の社会保険料については免除要件が緩和された一方で、賞与にかかる社会保険料については免除要件が厳しくなります。
賞与の場合もこれまでは、月末時点で育児休業を取得している場合に、当月に支給される賞与の保険料が免除される仕組みでした。
しかし、賞与の保険料免除を受けるために賞与月を選んで月末に短期間の育児休業を取得する人が多いという現状がありました。
こうした行為を防ぐために、賞与にかかる社会保険料については、休業が短期間の場合は免除されない仕組みに変わります。
改正後は、育児休業期間が「1ヵ月超」の場合のみ、賞与にかかる社会保険料が免除されます。つまり、賞与の保険料免除を受けるには暦月1ヵ月+1日の休業を取得する必要があるということです。
なお、免除対象となるのは、育児休業等期間に月末が含まれる月に支給された賞与にかかる保険料です。賞与の支給日が育児休業中にあったかどうかは関係ありません。
3育児休業中の社会保険料免除Q&A
ただし、産後パパ育休の就業の仕組みにより働いた日(注)は含めず、休業日数から差し引きます。
1日未満の時間単位で就業した場合は、「その合計時間数÷1日の所定労働時間」を就業日数として差し引きます(1日未満切り捨て)。
【休業期間】10/1~10/28(28日間)
【就業日数】40時間(40時間÷所定1日7時間=5.71・・・ ⇒5日)
【育児休業等日数】28日-5日=23日
⇒14日以上あるため10月分の保険料は免除
(注)労使協定を締結した上で、事前に就業日を決めて働いた日
また、その後たとえば11/20~11/25に育児休業を取ったとしても、合算して14日以上とすることはできません。
また、産後パパ育休中の就業の仕組みにより働いた日も含め、休日日数から差し引かなくて良いとされています(月々の保険料免除の対象となる「14日以上」の数え方と異なる)。 一時的・臨時的に働いた日も、差し引かなくてよいことになっています。
1回目と2回目の育児休業等の間が土日や年次有給休暇など休日のみである場合も、実質的に連続して休んでいるため、1回目と2回目をあわせて1つの育児休業等とみなします。
また、これまでは育児休業の期間中に申出書を提出する必要があり、遅れた場合は理由書の添付が必要でしたが、改正後は短期間の取得が増えるため、育児休業期間が終了した後の提出が可能となります。休業終了日から1ヵ月以内であれば理由書の添付も不要です。
なお、免除の基準に達しない育児休業等については、届け出を提出する必要はありません。