人事労務 F/U NO.41

人事労務基礎講座 フォローアップ
≪判例・事例紹介、法改正情報など≫
主に医療機関や介護福祉関係にお勤めの方向けに、役立つ人事・労務関係の情報を定期的に配信しています。

就業規則の見直しを忘れていませんか?

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


労働法は、他の法律分野と比べて非常に改正が多く、ほとんど毎年のように改正があります。また、働き方のスタイルが大きく変わりつつある現在、定期的に就業規則を見直す必要がありますが、なかなかできていないということはないでしょうか? 特に見直しが必要なものをいくつか見ていきましょう。


就業規則の適用範囲は無期転換ルールに対応済みですか?

以前の正社員に適用する就業規則では、次のように規定しているものが一般的でした。

(適用範囲)
第○条 この規則は、全ての社員に適用する。ただし、有期契約の者、短時間勤務の者には適用せず、別に定める。

これは、正社員がフルタイムかつ無期雇用であることが一般的であるのに対し、非正規労働者の契約社員、パートタイマー、アルバイトなどは、「有期契約」「短時間勤務」が区別のポイントとなるのです。つまり、正社員用の就業規則は非正規労働者には適用しないということを規定しています。

しかし平成25年4月、有期雇用契約を繰り返し通算5年を超えることとなった者が申し出たときは、無期雇用契約に転換される制度が始まりました。

たとえば、補助的業務に従事してきた契約社員を数年後に無期雇用に転換しているかもしれません。無期転換の制度は、転換後に正社員としなければならないわけではありませんから、正社員にしないのであれば、転換後に適用する就業規則を用意しておく必要があるのです。別に用意しておかなければ、正社員と同じ労働条件を与えることになってしまうかもしれません。

改正法が施行されてから5年超となります。政府は無期転換の制度を更に強化する方針ですから、今一度、自社の状況をチェックしておきましょう。

ハラスメントを禁止する規定は定められていますか?

令和2年6月(中小企業は令和4年4月)、企業にはパワーハラスメントの防止措置を講じることが義務になりました。具体的には、次のとおりです。

  1. ①事業主の方針の明確化と周知・啓発
  2. ②相談窓口などの体制の整備
  3. ③事後の迅速かつ適切な対応 など

パワハラの他、セクハラ、マタニティーハラスメントなども防止する必要があります。就業規則には、パワハラなどの行為をしてはならないこと、行為者には制裁対象となることがある旨などを規定すべきとされています。最近では、ハラスメントへの意識も高まってきましたが、まだまだハラスメント防止に関する規定が盛り込まれていない会社が多いです。

長時間労働を禁止する規定は定められていますか?

これまでの就業規則には、時間外労働について次のように規定することが一般的でした。

(時間外労働)
第○条 会社は、業務上必要があるときは、所定労働時間を超えて勤務を命じることがある。

平成31年4月(中小企業は令和2年4月)から、時間外労働の上限規制が強化されました。この上限規制には罰則も設けられていますが、労働基準法の罰則は使用者にのみ適用されるもので、労働者が罰則の対象になることはありません。

時間外労働は労働者の自主性に任せている会社が多いようですが、給与計算の際に初めて長時間残業をしている社員がいることに気が付くという会社も少なくありません。

労働者に無謀な長時間労働をさせないようにするには、日頃から研修等で周知・啓発することはもちろんですが、就業規則に定め、労働契約上の労働者が守るべき事項としておくことが必要なのです。

前述の規定例のように、これまでの就業規則は残業を命じることを定めていても、働きすぎてはいけないということは定めていないものです。服務規律や制裁の規定に長時間労働を抑止する事項を盛り込みましょう。管理職への監督責任などを規定することも有効です。それぞれ職場レベルで防止の努力をさせましょう。

年次有給休暇の使用者による時季指定は定められていますか?

平成31年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日(注)については、使用者が時季を指定して取得させることが義務となりました。

この改正事項も、まだまだ盛り込まれていない会社があります。

(注)従業員が自主的に取得した日数は5日から控除します。

同一労働同一賃金について見直しましたか?

令和2年4月(中小企業は令和3年4月)から正社員と非正規労働者の間で、不合理な待遇の格差を禁止する法律が強化されています。

いわゆる「同一労働同一賃金」の問題です。これは、同じ仕事をする労働者に同じ賃金を支払うという考え方を表す言葉ですが、法律は、同じ仕事をする労働者に全く同じ賃金を支払うことまで求めているのではなく、説明のつかないような格差を禁止するというものです。また、賃金の他、教育訓練、あらゆる労働条件で不合理な格差が禁止されています。

待遇の格差を是正するには、次のようなステップで取り組みます。

step1 雇用形態の確認

step2 雇用形態ごとの格差の有無の確認

step3 待遇差についての説明の可否の確認

step4 是正すべき格差の解消

法律の改正にあわせて厚生労働省はガイドラインを作成しましたし、それ以前から有期雇用者と無期雇用者の待遇の格差は禁じられていましたので、最高裁まで争われる事件もでてきて、どのような格差が認められないのかも、明らかになってきています。

格差があるかどうかは、総合的にではなく、基本給、諸手当などを個別に比較していきます。

たとえば、正社員は上限なく通勤手当を支払っているのに、パートタイマーは2万円までを上限に支給するなども不合理な格差だとされています。このような場合、給与規定の通勤手当の支給ルールを直しておきましょう。

また、格差を是正するため休暇制度を見直す会社も多いようです。正社員には慶弔休暇が整備されているのに、パートタイマーには全くないということはありませんか? 正社員とパートタイマーの就業規則を比較してみましょう。

在宅勤務は正規の就労スタイルに規定しましたか?

新型コロナウイルスのまん延防止を目的に、多くの会社が在宅勤務を始めましたが、一時的な対応として、就業規則に正式に盛り込んでいない会社も多いでしょう。

すでに多くの労働者が在宅勤務に働きやすさを感じていますし、NTTがグループ企業3万人を対象に原則在宅勤務とする制度を発表し、他社への影響がうわさされています。

BCP(事業継続計画)の観点からも在宅勤務を恒常的な制度とする会社もあるでしょう。

在宅勤務を集合規則に定める場合次のような点を見直してみましょう

主な規定事項
①就業ルール
(事前申告、移動時間、業務報告など)
②通勤手当の支払い方
(定期券代とするか日払いかなど)
③自宅作業でかかった通信費、水道光熱費などの取り扱い

育児休業の分割取得に対応しましょう

育児介護休業法の改正により、本年10月から産後パパ育休、育児休業の分割取得などの施行が目前となっています。制度が非常に複雑になりますから、厚生労働省の規定例などを参考に育児介護休業規程を全面的に書きなおす必要があります。

併せて、育児介護休業の労使協定も見直しましょう。こちらも、同一労働同一賃金の考えからは社員と非正規労働者に不合理な格差が生じないように整備しましょう。

中小企業は割増賃金率の引き上げに備えましょう

来年4月からは、中小企業に猶予されている月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ(25%⇒50%以上)なども控えています。

まだまだ先のことと考えていると、対応が間に合わなくなるかもしれません。早めに見直しましょう。

見直す箇所は対応方法によっていくつかあります。そもそも長時間労働にならないようにしようとすれば、前述の長時間労働の防止規定なども必要ですし、給与規定の時間外手当の計算方法の箇所を見直すことも必要です。

(公開日 : 2022年09月15日)
今、医療業界の組織も装備すべき労働管理の基礎知識
人事・労務基礎講座I
迫る「働き方改革」に備え、医療機関や介護福祉関係で最も問題となる労働時間をはじめ、休日や賃金などの人事・労務の基礎知識を身につけていただけます。
今、医療業界の組織も装備すべき労働管理の基礎知識
人事・労務基礎講座II
医療機関や介護福祉関係でも関心の高い採用・配置転換から服務規律や安全衛生などの人事・労務の基礎知識を身につけていただけます。「働き方改革」にお備えください。