会計力 F/U NO.39
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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.39 アルフレッサホールディングス株式会社
【決算書の簡易診断とは】
実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
負債合計額が総資産額よりも小さいので債務超過ではありません。
2022年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度▲181億円となり、4,718億円に減少しました。これに対し、お金の運用先である総資産は対前年度▲127億円で、1兆3,040億円に減少しました。
この結果、負債は対前年度+55億円で8,322億円に増加しました。
財務体質を表す自己資本比率(※純資産=自己資本としています)は、対前年度▲1.0ポイントで36.2%に下がりましたが、年商10億円以上の卸売業の2021年度の自己資本比率の平均値33.3%(財務省の法人企業統計調査による)を上回るまずまずの水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
2022年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+84億円で291億円に増加しました。売上高営業利益率は対前年度+0.3ポイントと改善し1.1%となりました。
当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+7億円の増益で、黒字額は326億円に拡大しました。売上高経常利益率は対前年度+0.1ポイントと改善し、1.3%となりました。
営業利益、経常利益のどちらも増加しましたが、2020年3月期の水準を回復できていません。前述した法人企業統計調査によると売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ1.7%、4.4%です。それらと比較すると、どちらの利益率も低い水準です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
固定費の回収パワーである貢献利益は対前年度+120億円の増加となりました。一方、固定費は+113億円の増加となりました。回収パワーよりも固定費の増加率の方が大きかったため、損益分岐点比率は対前年度+0.8ポイントの改悪となり、82.6%に上昇しました。前述した法人企業統計調査による平均値54.6%を大きく上回る水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度+0.05ヵ月で0.84ヶ月に上昇しました。前述した法人企業統計調査による平均値0.68ヵ月を上回る水準ですが、判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回る危険な水準です。
【総合評価】
新型コロナウイルス感染症の影響で経営成績は不振です。売上高は減収(▲175億円)となりました。しかし、変動費比率を下げたことにより、固定費の回収パワーである貢献利益は+120億となりました。貢献利益率は+0.5ポイント改善し7.3%に回復しています。固定費が+113億円の増加となった結果、当期の経常利益は+7億円の増益で326億円となりました。
経常利益は増加に転じましたが、損益分岐点比率は82.6%に上昇しており、採算構造は悪化しています。 財務面では、利益剰余金の厚みが増え(+206億円)ましたが、自己株式の取得(▲153億円)と保有株式の売却などに伴う「その他有価証券評価差額金」の減少(▲232億円)により、自己資本は▲181億円となりました。これに対し、資金運用の総資産は、投資有価証券の売却(▲418億円)にともない、▲127億円の減少となりました。自己資本が減少する以上に総資産が減少した結果、負債は+54億円となりました。この結果、自己資本比率が下がり、財務体質の指標はやや低下しています。
【その他】
新型コロナウイルス感染症の影響で2期連続の減収です。経営不振に加えて、円安に伴う物価上昇などの影響もあるため、次回の薬価改定時の医薬品などの価格交渉は一層厳しくなることが予想されます。医療機関への価格転嫁に気をつけましょう。貢献利益率7.3%が交渉時のメルクマールです。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。