人事労務 F/U NO.43
人事労務基礎講座 フォローアップ
≪判例・事例紹介、法改正情報など≫
主に医療機関や介護福祉関係にお勤めの方向けに、役立つ人事・労務関係の情報を定期的に配信しています。
1.10月から、労働者の募集ルールが変わりました
2.60歳以降も働く場合の「高年齢雇用継続給付」とは?
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
110月から、労働者の募集ルールが変わりました
令和4年10月1日から、法律が改正され、企業が労働者の募集をおこなう際のルールが変わっています。主なポイントを紹介します。
① 求人情報の的確な表示
求人企業に、「求人情報」や「自社に関する情報」の的確な表示が義務付けられました。これにより、虚偽や一般的・客観的に誤解を生じさせる表示が禁止されています。
誤解を生じさせる表示とは、たとえば、営業中心の業務を「事務職」と表示したり、モデル収入例を必ず支払われる基本給のように表示するなど、図のような場合が該当します。
また、求人情報を正確・最新の内容に保つための措置が求められており、募集を終了・内容変更したときは速やかに自社サイトの求人情報を更新したり、求人メディア等に変更依頼をかけるといった対応をおこなわなければなりません。
注意点と「誤解を生じさせる表示」例 | |
業務内容 | 職種や業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いない |
|
|
賃金 | 固定残業代を採用する場合に、基礎となる労働時間等を明示せず、基本給に含めて表示するようなことをしない |
|
|
モデル収入例を、必ず支払われる基本給のように表示しない | |
|
|
募集者名 | 優れた実績を持つグループ会社の情報を大きく記載する等、求人企業とグループ企業が混同されるような表示をしない |
|
② 個人情報の収集目的を具体的に
応募者の個人情報を収集する際は、応募者が想定できる程度に具体的にその目的を明らかにしなくてはなりません。たとえば「面接日程の連絡のため」「当社の募集内容に関するメールマガジンを配信するため」などです。
260歳以降も働く場合の「高年齢雇用継続給付」とは?
定年後も働き続けたいのですが、会社から賃金が下がると言われました。高年齢雇用継続給付という制度があると聞いたのですが、どのような制度なのでしょうか。
高年齢雇用継続給付は、60歳時点の賃金より、その後の賃金が75%未満まで低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の人に、低下した賃金の割合によって支給される雇用保険の給付です。
① 60歳を過ぎて賃金が下がったら
60歳の定年後に、同じ会社に再雇用されたり、一度退職して再就職したりすると、ほとんどの場合は賃金が下がってしまいます。こうした状況をカバーするために「高年齢雇用継続給付」制度があります。
この制度には、60歳以上で継続雇用されている人や、失業給付(正式には基本手当)を受給せずに再就職した人を対象とする「高年齢雇用継続基本給付金」と、失業給付を受給し再就職した人を対象とする「高年齢再就職給付金」があります。
② 被保険者期間などが支給要件に
高年齢雇用継続給付は、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
- 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者であること
- 被保険者であった期間が5年以上あること
- 60歳以後の賃金が、60歳時点と比較して75%未満であること
再就職給付金の方は、さらに次の3つの要件を満たす必要があります。
- 基本手当についての算定基礎期間が5年以上あること
- 基本手当に支給残日数が100日以上あること
- 1年を超えて雇用されることが確実な職業につくこと
③ 支給期間は65歳まで
高年齢雇用継続給付の支給期間は、60歳に達した月から、65歳に達する月までです。
再就職給付金は、さらに制限があります。基本手当の支給残日数が200日以上のときは、再就職日から2年となり、100日以上200日未満のときは同様に1年となります。支給残日数が100日未満の場合は、支給要件を満たさないので支給されません。
被保険者が65歳に達した場合は、その期間にかかわらず65歳に達した月までとなります。
④ 毎月いくらもらえる?
基本的には、高年齢雇用継続基本給付金と再就職給付金はほぼ同額です。60歳以前に受け取っていた賃金からどれだけ下がったかで支給率が変わってきます。賃金が61%以下に低下した場合は支給率が15%となります。支給率は徐々に下がり、賃金が60歳時点の75%以上になるともらえなくなります。
なお、令和7年度からは給付率が「最大15%→最大10%」に縮小される予定です。
支給額には上限と下限が定められていて、毎年8月1日に改定されます。