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1.教育訓練費用から見える格差
2.うつ病による休職者、復職時の注意点は?

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


教育訓練費用から見える格差

令和3年度の「能力開発基本調査」の結果が、厚生労働省より公表されました。

① 教育訓練費を支出した企業は5割

教育訓練費用(職場外の教育訓練であるOFF-JTの費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は、50.5%(前回50.0%)でした。また、OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額は1.2万円(同1.5万円)、自己啓発支援に支出した費用の労働者一人当たり平均額は0.3万円(同0.3万円)でした。

② OJT実施状況

計画的なOJT(職場内で上司等が部下を指導すること)について、正社員に対して実施した事業所は59.1%(同56.9%)、正社員以外に対して実施した事業所は25.2%(同22.3%)でした。

④ 雇用形態や男女の格差

OFF-JTを受講した労働者は、全体の30.2%(前回29.9%)でした。これを雇用形態別に見ると正社員の38.2%に対して、正社員以外は15.8%と大幅に低くなっています。また、性別で見ると男性が36.3%、女性が23.4%となっています。

自己啓発をおこなった者は、労働者全体で36.0%(同32.2%)で、正社員は44.6%、正社員以外は20.4%でした。男性は42.7%と、女性の28.1%より高くなっています。

国は、雇用における男女格差や正規・非正規間の格差是正を進めているところです。企業の教育訓練においても、さまざまな格差をなくしていくことが必要です。

OFF-JTを受講した者・自己啓発をおこなった者

うつ病による休職者、復職時の注意点は?

主治医の復職可能という診断書をもとに、うつ病で休職していた者を復職させましたが、数日で、また欠勤を繰り返すようになってしまいました。どうすればよかったでしょう。

一概に言うことはできませんが、主治医の診断だけに従うのではなく、休職前の病状を詳しく把握するように努めましょう。そうしなければ、復職させるかどうか、回復状況を正しく判断することができないからです。

① 私傷病と休職制度の活用

休職制度とは、私傷病などにより長期に渡り通常の勤務ができなくなった労働者に対し、会社が一定期間の勤務を免除するものです。

勤務を免除するといいましたが、本人が自由に休んだり働いたりできるわけではなく、一般に1ヵ月程度の欠勤が続いた場合、医師の診断などに基づき一定期間の休職を命じます。休職期間は、会社によって数ヵ月程度のものもあれば、1年~2年程度のものもあります。

② 休職制度の効果とは

本人が休職期間中に回復したときは、会社に復職を申し出ますが、会社は医師の診断などをもとに病状等を確認し、復職を認めるかどうかを判断します。

休職期間中に復職が叶わなかったときは、就業規則の定めに基づき自動退職()となります。

労働者によっては長期に渡り勤務できないにもかかわらず解雇を猶予されるというメリットがあります。

会社としても一定期間の解雇を猶予する代わりに期間満了によって自動退職させることで、解雇のリスクを負わないことになります。

)就業規則で解雇すると定めている場合は解雇となります。

③ 休職開始時の症状を確認する

ご質問のように、医師の診断に従って復職させてみたが、すぐに休職前の症状に戻ってしまったというのはよくある話です。

医師の診断書は患者の意向をくんでいることも多く、また、患者の就業が症状にどの程度負担になるかを医師が正確に把握しているとは限りません。最終的に復職の判断をし、その責任を負っているのは会社なのです。

トラブルを防ぐために重要なのは、会社が病状をできる限り詳しく把握することです。特に休職開始時の症状(涙もろくなった、○時頃まで眠れないなど具体的に)の確認が重要です。このときの確認が足りないと、復職の判断をする際に回復の程度がわからないため、医師の診断書だけを頼ることになってしまうのです。

病状について詳しく聞くことはプライバシーに立ち入ることと思われるかもしれませんが、やむを得ない場面と言えるでしょう。

④ 試し出勤による回復状況の確認

「試し出勤」という確認方法もあります。例えばメンタルヘルス疾患などの場合、一定時間に起きられてないことが多いため、回復状況の確認のため毎朝定時に出勤できるか1週間程度模擬的な出勤をさせ、上司と挨拶して帰らせるということをします。上司は顔色や様子を見ることで回復状況を確認することができます。なお、これは勤務ではないので賃金を支払う必要はありません。

⑤ 復職後の短時間勤務制度は必要か

復職を認めるのは、休職前とまったく同じ業務ができる程度である必要があるのか、少し負担の軽い業務であればできる場合や、短時間の勤務であればできるという場合はどうかという問題があります。

裁判例では、他に負担の軽い業務があるのであれば復職を認めるべきとしたものや、数ヵ月間の短時間勤務から復職させるべきとしたものがあるため、2~3ヵ月程度の慣らし勤務期間を設けることが必要な場合もあります。労使で復職時によく話し合って慎重に判断しましょう。

⑥ 休職期間の通算ルール

復職後、再び休職せざるを得ないことになるケースについては、休職期間の通算を就業規則に規定しておくことも有効です。復職後1年程度の間に再度同様の傷病で休職となった場合、前後の休職期間を通算し、休職期間の満了となった場合に自動退職とするものです。

(公開日 : 2022年10月17日)
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