会計力 F/U NO.42
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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.42 株式会社東邦HD
【決算書の簡易診断とは】
実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
負債合計額が総資産額よりも小さいので債務超過ではありません。
2022年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度+39億円となり、2,413億円に増加しました。これに対し、お金の運用先である総資産は対前年度+192億円で、6,024億円に増加しました。この結果、負債は対前年度+153億円で4,611億円に増加しました。
財務体質を表す自己資本比率(※純資産=自己資本としています)は、対前年度▲0.3ポイントとなり34.4%に下がってしまいました。他の医薬品卸業者と比較して低い水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
2022年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+82億円で125億円に増加しました。売上高営業利益率は対前年度+0.6ポイントと改善し1.0%となりました。
当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+79億円の増益で、黒字額は182億円に拡大しました。売上高経常利益率は対前年度+0.5ポイントと改善し、1.4%となりました。
営業利益、経常利益のどちらも改善していますが、新型コロナウィルス感染症の流行前の水準には至っていません。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
固定費の回収パワーである貢献利益は対前年度+93億円の増加となりました。一方、固定費は+14億円の増加となりました。固定費よりも貢献利益のほうが増加した結果、損益分岐点比率は対前年度▲6.4ポイントの改善となり、83.3%に下がりました。まずまずの水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度▲0.03ヵ月で0.89ヶ月に下がりました。判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回る危険な水準です。
【総合評価】
経営成績は対前年度で増収増益の良い構図となりました。売上高は直近4期における最高値を記録しています。対前年度では、売上高は増収(+559億円)し、固定費の回収パワーである貢献利益は+93億円となりました。固定費の増加を+14億円に抑えた結果、当期の経常利益は+79億円の増益となり、182億円となりました。損益分岐点比率は83.3%に下がっており、採算構造は改善しています。
しかしながら、営業利益、経常利益は、金額、対売上高比率ともに、新型コロナウィルス感染症の流行前の水準を回復できていません。原因は他の医薬品卸業者にも観察された、貢献利益率の低下にあると考えられます。貢献利益率の低下、すなわち売上原価率の上昇による影響が考えれます。新型コロナウィルス感染症の流行や社会情勢に伴う、エネルギー価格や原材料価格の高騰の影響があると思われます。
財務面では、利益剰余金の厚みが増え(+114億円)ましたが、自己株式の取得(▲43億円)や、保有資産の評価額の減少(▲77億円)などにより、自己資本は+39億円に留まりました。これに対し、資金運用先の総資産は、流動資産(主に売掛債権)が+262億円となった結果、192億円の増加となりました。自己資本の増加以上に総資産が増加した結果、負債は+153億円となりました。自己資本比率は▲0.4ポイント下がっており、財務体質には留意が必要です。
【その他】
円安などに伴う物価上昇の影響を受け、薬価改定時の医薬品などの価格交渉は一層厳しくなることが予想されます。医療機関への価格転嫁には十分気をつけましょう。貢献利益率8.6%が交渉時のメルクマールです。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。