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どうすればいい? 是正勧告から改善、報告までの流れ

労働基準監督署の是正対応Q&A

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所

これまで労働基準監督署の調査の対象になったことがないという会社も多いでしょう。しかし「もう10年以上経営しているのに来たことがない」という会社であっても、明日にも突然調査の通知が届くかもしれません。調査を受けると、しっかり法律を守ってきたと思う会社でも「是正勧告書」を受け取ることになるかもしれません。監督署の調査からその後の対応などを見てみましょう。


監督署にはどんな権限がある?

監督署の主な窓口には、労働保険の申告と保険料徴収、労災保険の給付に関するものと、労働安全衛生法に関するもの、そして労働基準法に関するものなどがあります。
今回取り上げるのは、労働基準法に関する窓口にいる監督官による監督指導についてです。
この監督官は、「特別司法警察職員」といって、労働基準法の違反について強制捜査をする権限があり、賃金台帳やタイムカードなどの書類の提出を求めたり、尋問(質問などをすること)をしたり、場合によっては違反者を逮捕することもできます。

監督署はどんなときに来る?

自社の労働者が賃金の未払いなどについて監督署に相談したことがきっかけとなることもありますが、そのような場合以外にも、監督署は常に一定量の調査を実施しています。簡単なアンケートが郵送されてくることもありますし、指定の日時に、監督署へ指定した書類を持って来るよう求める文書が届くこともあります。まれなケースですが、事前の予告なく急に監督官が会社に来て書類を見せるよう求められることもあります。
このようなことから監督官による調査が始まります。

是正勧告書とは?

是正勧告書 監督官による調査の結果、何らかの違反が発見されるとします。その場合でも、交通違反のようにいきなり罰金ということにはなりません。基本的には「是正勧告書」という文書が作成され、改善を促されることになります。
是正勧告書には、労働基準法の何条に違反しているのか、「労使協定の届出をせずに時間外労働を行っている」といった違反の内容、いつまでに是正すべきという期日が書かれています。
この文書を受け取る際は、社長などに受領の署名が求められます。また、一緒に「指導票」というものも受け取ることがあります。是正勧告書よりも程度が低いものではありますが、改善事項として、あわせて是正に取り組むべき内容といえます。
なお、特定の労働者から監督署へ訴えがあっておこなわれる場合は、その違反事項が完全に是正されるまで厳しく指導されます。

どんな指摘を受けるの?
指摘されるのは、やはり労働時間と賃金に関するものがほとんどでしょう。労働基準法の他にも労働安全衛生法に関する事項も指摘されます。
具体的な内容は会社の状況にもよりますが、たとえば次のようなものがあります。
「時間外休日労働に関する協定届(通称「36協定」)を届け出ないまま残業や休日労働させている。
36協定に記載された上限を超えて働かせている。
残業代を正しく支払っていない。
健康診断を実施していない。
年次有給休暇を与えていない。
など
平成31年より、年次有給休暇のうち少なくとも年5日は確実に消化させることが義務付けられています(使用者からの時季指定義務)。最近ではここが基本的なチェック事項になっているらしく、よく指摘されます。

必ず是正しなければならない?

是正勧告書はあくまでも指導です。会社の自主的な改善を促すもので、法律上の強制力があるものではありません。しかし、是正勧告書が出されるということは、明確に法律違反があるということです。不誠実な態度や、いい加減な対応をしていると、指導が厳しくなっていき、追加の是正勧告が出されることもあります。最終的には経営者を書類送検し、検察庁に判断を任せるという事態になることがあります。

どのように是正するの?
是正勧告書が出された場合は、指摘された点を改善し、「是正報告書」により結果を監督官に報告します。
指定された是正期日までに改善しなければなりませんが、間に合わない場合は、その旨を監督官に相談すれば、期日を延期してもらえるでしょう。
具体的にどのように是正するのかは、指摘された内容によって異なります。以下、主な事例を見てみましょう。

事例①
36協定を届け出ず時間外労働

最近では、コンプライアンス(法令順守)の意識が高まり、親会社や取引先などから「36協定」の届出ができているか確認されることもあるため、しっかり届出している会社が増えてきた印象です。しかし、一部にはまだできていない会社もあるようです。
「36協定」の未届けを指摘された場合、是正期日までに労使で協定を締結し、届け出ます。「届け出るまで時間外労働は禁止」とまでは言われませんが、これを機に毎年忘れずに届出するよう定着させましょう。

事例②
常時10人以上規模で就業規則の未届け

就業規則の未届けは、すでに作成できていて届出だけしていなかった場合は、速やかに労働者の意見書、就業規則届と一緒に届け出ます。しかし、まだ作成していないとなると、最も時間がかかる是正事項になるでしょう。監督官もそこは理解していますから、あらかじめ是正期日を待ってもらうように相談し、作成を始めましょう。

事例②
常時10人以上規模で就業規則の未届け

就業規則の未届けは、すでに作成できていて届出だけしていなかった場合は、速やかに労働者の意見書、就業規則届と一緒に届け出ます。しかし、まだ作成していないとなると、最も時間がかかる是正事項になるでしょう。監督官もそこは理解していますから、あらかじめ是正期日を待ってもらうように相談し、作成を始めましょう。

事例③
未払残業代のさかのぼり支払

「残業代を支払っていない」「正しい計算内容で支払っていない」「実際の残業の一部の時間しか支払っていない」などの場合、さかのぼって数ヵ月分の残業代を期日までに支払うよう求められることがあります。6ヵ月程度さかのぼるのが一般的ですが、監督署の方針や会社の問題の程度などで期間を調整されるようです。
このような指摘には、正しく残業代を計算し直し、未払額を支払わなければなりません。
あくまでも会社が自主的に計算するものですが、計算過程までしっかり電卓を入れて確認されますから、説明資料なども作って持参するといいでしょう。銀行振込で支払い、振り込みの一覧までチェックされるのが一般的です。

事例④
長時間労働による労使協定の上限違反

36協定に定めることができる時間外労働の上限は、原則月45時間、「特別条項」()を定める場合は単月100時間(休日労働時間を含む)ですが、その範囲で労使が協定した時間が実際の上限となります。
この上限を超える場合は、労使の努力で時間外労働の削減に取り組む必要があります。会社の超過時間の程度や業態によって取り組み方も変わってきますが、なかなか短縮できない場合は数ヵ月に渡って監督署に報告に来るよう求められることもあります。

)臨時・特別な事情がある場合は年6回を限度に時間外労働の上限を超えることができることを定めるもの。

   是正勧告は会社を見直す機会だ

是正勧告は、指摘事項によって非常に悩ましいものでしょう。しかし、労働者からの未払賃金訴訟や過労死事故などが起きてから大きな問題に取り組むよりも、よほど優しいものなのです。自社の甘かった部分を指摘されたのだと前向きに捉えて是正に取り組む必要があります。
さらに言えば、このような監督署の調査になる前であれば、じっくり改善に取り組むことができるのです。

(公開日 : 2023年02月20日)
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