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1.育児休業の個別周知・意向確認義務 きちんと実施していますか?
2.精神障害の労災増加、過去最高を更新

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


育児休業の個別周知・意向確認義務 きちんと実施していますか?

従業員から「上司に妻の出産の報告をしたのに、育児休業の個別周知・意向確認がされない」と言われました。
会社は労働者に対し何をしなければいけないのでしょうか?

育児・介護休業法の改正により、令和4年4月から、会社はその規模に関わらず、出産の申出をした労働者に対し、育児休業制度に関する事項の周知と、休業取得についての意向確認を、個別におこなわなければなりません。

① 周知すべき事項とは

会社が労働者に対し、周知すべき事項とは、次の4つになります。

  • 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休(※1))に関する制度内容(期間・分割取得等)
  • 育児休業・出生時育児休業の申出先(人事課・総務課等)
  • 育児休業給付に関する事(制度内容等)
  • 労働者が育児休業・出生時育児休業期間に負担すべき社会保険料の取扱い

※1)令和4年10月より創設された子の出生直後8週間以内に4週間まで取得できる出生時育児休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度

② 労働者への周知時期と方法

周知時期については、労働者が希望する日から円滑に育児休業等を取得できるよう配慮することが求められるため、出産予定日の1ヵ月前までに周知を行うのがよいでしょう。労働者からの申し出が、1ヵ月を切ったタイミングで行われた場合には、できる限りすみやかに周知する必要があります。

また、個別周知・意向確認の方法については、(1)面談(オンライン面談も可能)、(2)書面交付、(3)FAX、(4)電子メール等(※2)のいずれかでおこないます。

※2)(3)(4)は労働者が希望した場合に限る

③ 55%の企業が個別周知と意向確認を実施せず

NPO法人ファザーリング・ジャパンがおこなった男性の育児休業に関する調査結果によると、法改正以降に子供が生まれた男性労働者に対し、55.1%の企業が育児休業制度の個別周知・意向確認を実施していないことが明らかになりました。

半数を超える企業が法令違反ということになりますが、場合によっては最大20万円の過料が科されたり、企業名が公表されることもあります。

どのように実施すればよいかわからないという場合は、厚生労働省の「個別周知・意向確認記載例」(図参照)を活用すると良いでしょう。

個別周知・意向確認記載例

④ 個別周知と意向確認をおこなう際の注意点

個別周知や意向確認措置の目的は、労働者が育児休業の申し出を円滑におこなえるようにするためのものですので、取得を控えさせるような形で実施することは認められません。

例えば、取得の前例がないことをことさらに強調するケースや、取得を申し出た場合の不利益をほのめかすようなケース等が、これに該当します。

また、意向確認をした際に「取得の意向はない」と回答があった場合でも、その後に労働者から取得の申し出がされた場合には、会社は拒むことはできません。

精神障害の労災増加、過去最高を更新

厚生労働省は6月30日、「過労死等の労災補償状況」を取りまとめ公表しました。

令和4年度の精神障害(メンタルヘルス疾患)における労災補償の請求件数は2,683件(前年度比337件増)、支給決定件数は710件(同81件増)で、ともに過去最多となりました。

支給決定された件数のうち自殺(未遂を含む)は67件でした。

精神障害に係る労災請求・支給決定件数

① 「医療、福祉」で最多

業種別に見ると、請求件数、支給決定件数ともに「医療、福祉」「製造業」「卸売業、小売業」の順で多くなっています。「医療、福祉」の中でも「社会保険・社会福祉・介護事業」が最多でした。

職種別では、請求件数、支給決定件数ともに「専門的・技術的職業従事者」が最も多く、「専務従事者」「サービス職業従事者」が続いています。

支給決定件数を年齢別に見ると「40~49歳」が最多で213件、次いで「20~29歳」(183件)、「30~39歳」(169件)となっています。

② 発症の原因はパワハラが最多

支給決定された発症の原因となる出来事では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」(147件)、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」(89件)、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(78件)、の順に多くなっています。

(公開日 : 2023年10月16日)
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