人事労務 F/U NO.53

人事労務基礎講座 フォローアップ
≪判例・事例紹介、法改正情報など≫
主に医療機関や介護福祉関係にお勤めの方向けに、役立つ人事・労務関係の情報を定期的に配信しています。

1.年次有給休暇の法違反が大幅に増加
2.本人が申請しないから有休休暇を与えていない。これって違法?

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


年次有給休暇の法違反が大幅に増加

厚生労働省がまとめた令和3年労働基準監督年報によると、「年次有給休暇」に関する法違反の件数が約9,800件と、前年の3倍近くに増加していることが分かりました。

① 令和2年より急増

近年の定期監督実施件数と「年次有給休暇」に関する法違反件数はグラフのとおりです。定期監督の実施件数はやや減少しているのに対して、「年次有給休暇」の法違反件数は令和2年に急増、さらに令和3年には前年の約3倍に増加しています。

定期監督実施件数と年次有給休暇の法違反

② 時季指定義務違反で送検も

このように急激に増加したのは、法改正により平成31年4月から年次有給休暇の使用者側からの時季指定が義務化されたためです。(詳しくは参照)。労働者が自発的に年次有給休暇を取得しなかったとしても、事業主が時季指定して必ず取得させる必要がありますが、これができておらず法違反となっている事業所が多いものと思われます。

年次有給休暇の時季指定が義務については、令和3年7月に初の送検事例も出ています。

本人が申請しないから有休休暇を与えていない。これって違法?

有給休暇を1年間まったく取得していない社員が何人かいます。本人が申請してこないので仕方ないと思うのですが、それでも違法になると聞きました。どういうことですか?

年次有給休暇(以下「年休」といいます)のうち5日分については確実に取得させる必要があり、自主的に取得していないのであれば使用者側から「○月○日に取得しなさい」と時季を指定して取得させる義務があります。年次を年5日取得できなかった労働者が1人でもいる場合は法違反となります。

① 年5日分を確実に取得させる

法改正により平成31年4月から年次有給休暇の使用者側からの時季指定が義務化されていますが、まだまだ実施できていない企業が多いようです。でも紹介したように、年休の時季指定義務違反で監督署から指導を受ける例が急増しています。

時季指定義務とは、年休のうち5日分について使用者側から時季を指定して取得させなければならないというものです。「年休は5日以上消化するようにしてください」と労働者ごとに時期も指定して確実に取得させなければなりません。

なお、時季を指定するにあたっては、労働者本人の希望に配慮するよう求められています。

② 10日以上付与した人が対象

使用者側から時季指定する必要があるのは、年休の付与日数が年10日以上の労働者です。正社員やフルタイムの契約社員などはもちろん、比例付与の対象(所定労働時間が週30時間未満で所定労働日数が週4日以下)となるパートタイマーであっても勤続年数が数年経過することで付与日数が年10日以上となり対象となることがあります(表参照)。

しかしあくまでも、その年の付与日数が10日以上の人が対象です。繰り越した日数を見る必要はありません。

年休の付与日数と時季指定の対象

③ 年休管理簿を作成して3年保存

基準日(年休が発生した日)から1年以内に、労働者ごとに時季を定めなければなりません。

対象者は誰なのか、いつ取得させるか、実際にいつ取得できたかなど、労働者一人ひとりの年休の取得状況を把握しなければなりません。そのため年休の管理簿を作成し、3年間保存することも義務付けられています。

④ 労働者がすでに消化したときは

5日分の時季指定をしていたとしても、たとえば計画的付与(※1)や労働者が自ら申し出て3日分を消化したのであれば、使用者から時季を指定して与える義務は2日分になります。

労働者が5日分以上取得したのであれば、もう時季指定する義務はありません。逆に、法律上の義務がなくなったのに、「○月○日に取得しなさい」と命じることはできません。

※1)年休のうち5日を超える分について労使協定を結び、計画的に取得日を割り振る制度。

③半日単位、時間単位は?

年休は原則として1日単位で与えるものですが、本人が希望し使用者が認めるのでれば半日(0.5日)単位での取得も可能です。使用者側からの時季指定においても、「本人が希望する場合」は半日単位でも差し支えないとされています。

なお、時間単位の取得については労使協定など一定要件を満たせば可能ですが、使用者側からの時季指定においては、たとえ労働者が希望したとしても時間単位は認められません。

(公開日 : 2023年09月15日)
今、医療業界の組織も装備すべき労働管理の基礎知識
人事・労務基礎講座I
迫る「働き方改革」に備え、医療機関や介護福祉関係で最も問題となる労働時間をはじめ、休日や賃金などの人事・労務の基礎知識を身につけていただけます。
今、医療業界の組織も装備すべき労働管理の基礎知識
人事・労務基礎講座II
医療機関や介護福祉関係でも関心の高い採用・配置転換から服務規律や安全衛生などの人事・労務の基礎知識を身につけていただけます。「働き方改革」にお備えください。