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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.11 ニプロ株式会社
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 2019年度3月期時点の総資産(=負債と純資産の合計)は8,458億円で、対前年度+194億円の増加となっています。
- そのうち、負債合計は6,740億円(対前年度+310億円)、自己資本(純資産)は1,718億円(対前年度▲117億円)です。総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
- しかしながら、自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、対前年度▲1.9ポイントで20.3%に下がっています。やや低い水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は238億円の黒字ですが、対前年度▲33億円の減少となっています。売上高営業利益率は対前年度▲1.3ポイントで、5.6%に下がっています。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は、224億の黒字ですが、対前年度▲3億円の減益です。
- 売上高経常利益率は、対前年度▲0.5ポイントで、5.3%に下がっています。
- 営業利益、経常利益のどちらも対前年度で減少しており、収益力の低下が伺えます。ただし、売上高に対する比率はどちらも5%台をキープしており、今のところはまずまずの成績です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 損益分岐点比率は82.8%とまずまずの水準です。対前年度では+0.7ポイントとなっており、生産性が低下しています。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は3.64ヶ月(対前年度▲0.67ヵ月)です。判断基準値である1.50ヶ月を大きく上回る優良な水準です。
【総合評価】
- 2019年3月期は対前年度で増収減益のあまり良くない経営成績です。変動費の増加(+275億円)以上の売上高の増収(+310億円)を確保した結果、貢献利益は増加(+35億円)しています。しかしながら、売上高貢献利益率は対前年度▲1.5ポイントとなっています。つまり、貢献利益は確保できているものの、固定費回収パワーである貢献利益の生産性は低下していることが分かります。
- 固定費は貢献利益以上の増加(+38億円)となったため、当期の経常利益は減益となりました。
- もし売上高貢献利益率が前年度と同じ水準(32.2%)だったら、貢献利益は1,371億円(+100億円)で、固定費増も吸収でき、経常利益も289億円(+62億円)でした。売上高からの“逃げ費”である変動費のコントロールの重要性が伺えます。
- 当期は収益面では黒字でしたが、財務面では、為替換算調整や自己株式の取得などが影響して純資産は減少し、短期借入の増加等により負債は増加しました。この短期借入の増加は、自己株式の取得と売掛・在庫等の流動資産(運転資金)の増加に伴う手元現預金の減少をカバーするためであったことが伺えます。
【その他】
- 新型コロナウイルスの影響で医療機関の経営の存続が危ぶまれています。ようやく自粛緩和に舵が切られ、経済活動回復に向け一歩前進しました。医療機関の受診自粛ムードも徐々に緩和されることが望まれます。
- 経済活動が回りだしたとはいえ、引き続き資金繰りには十分な注意が必要です。支払基金からの診療報酬支払が大きく落ち込む6月、7月を乗り切っても安心せず、余裕を持った長期的な資金繰りをご計画ください。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
(公開日 : 2020年05月29日)