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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。

決算書の簡易診断 No.15 株式会社エスアールエル

株式会社エスアールエル 簡易B/S、P/L

【決算書の簡易診断とは】

  1. 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
  2. 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。


【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?

  1. 2020年度3月期時点の総資産(=負債と純資産の合計)は875億円で、対前年度+132億円の増加となっています。
  2. そのうち、負債合計は608億円(対前年度+394億円)、自己資本(純資産)は267億円(対前年度▲263億円)です。総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
  3. 財務体質を表す自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、負債が大幅に増額する一方で純資産が大幅減少したため、対前年度▲40.7ポイントで30.5%に下がりました。70%台からの急落で、自己資金型経営から借入金型経営と変わり、財務面の安全性が一気に悪化しています。
評価「不可」

【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?

  1. 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は59億円で、対前年度+9億円の増加となっています。売上高営業利益率は対前年度+0.6ポイントで、5.6%に改善しています。
  2. 当期の正常収益力を表す経常利益は対前年度+3億円の増益で、61億円の黒字です。しかしながら、売上高経常利益率は、対前年度▲0.1ポイントで、5.9%に下がっています。
  3. 売上高に対する比率はどちらも5%超の良い水準です。
評価「良」

【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?

  1. 損益分岐点比率は、対前年度で▲0.6ポイントの改善となっており、74.1%と良い水準です。
評価「良」

【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?

  1. 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は0.09ヶ月(対前年度▲0.01ヵ月)と、判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回っています。
  2. ただし、キャッシュ・マネジメントシステムにより親会社のみらかホールディングス株式会社が資金を一元管理しているため、算出値だけでは判断出来ません。
  3. なお、みらかホールディングス株式会社の連結財務諸表による手元現預金月商倍率は2.08ヵ月[=現金及び預金364億円÷(当期売上高1,887億円÷12ヶ月)]と安定した水準です。
評価「-」

【総合評価】

  1. 2020年3月期は対前年度で増収増益の良い経営成績でした。
  2. 売上高が増収(+57億円)する一方、変動費も同程度の増加(+53億円)となりました。一見すると問題なさそうですが、売上高貢献利益率は対前年度▲0.8ポイントと下がっており、固定費回収パワーが低下しているのが分かります。ただし、売上高貢献利益率は22.7%の高水準をキープしており、元々の収益力の高さが伺えます。
  3. 固定費が増加(+2億円)しましたが、それ以上に貢献利益の増加(+5億円)を確保した結果、当期の経常利益は増益(+3億円)となりました。
  4. 財務面では、B/Sの右側の純資産が対前年度▲263億円となりました。これは、社内に留保していた利益剰余金のうち300億円を親会社のみらかホールディングスに配当として支払ったことによります。一方、負債では社債を300億円発行しています。親会社による資金の吸い上げにより、調達先が内部から外部にかわったことで、当企業には利息の負担が生じることになります。
評価「良」

【その他】

  1. 当企業の貢献利益率は前期から下がったとはいえ22.7%の高水準です。また、利益剰余金を300億円もストックしていた点にも注目です。検査薬や検査委託料などが高止まりしていませんか。仕入価格交渉の際のメルクマールとして参考にしましょう。


  2. 会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。

(公開日 : 2020年09月30日)