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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.18 株式会社メディパルホールディングス
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 2020年度3月期時点の総資産(=負債と純資産の合計)は16,443億円で、対前年度+264億円の増加となっています。
- そのうち、負債合計は10,369億円(対前年度+118億円)、自己資本(純資産)は6,074億円(対前年度+146億円)です。総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
- 財務体質のシンボルである自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、負債の増額以上の純資産の増額を確保した結果、対前年度+0.3ポイントとなり36.9%に改善しました。年商10億円以上の卸売業の2019年度の自己資本比率の平均値34.2%(財務省の法人企業統計調査による)を上回る水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は531億円で、対前年度+33億円の増加となっています。売上高営業利益率はほぼ横ばいで1.6%を維持しました。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は対前年度+41億円の増益で、680億円の黒字です。
- 売上高経常利益率は対前年度+0.1ポイントで、2.1%に改善しています。
- 前述調査によると2019年度の売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ0.5%、2.4%です。それらと比較すると、経常利益率がやや低い水準にあると言えます。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 採算構造のシンボルである損益分岐点比率は、対前年度▲1.2ポイントの改善となり、71.3%に下がっています。
- 生産性が向上しており、良い水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は、対前年度▲0.04ヶ月となり、0.77ヶ月に下がっています。
- 自己株式の取得などの積極策のためですが、一般論としては、判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回っており、資金繰り面は要注意です。
- なお、同社の利益剰余金の社内留保は十分(利益剰余金÷資本金≒16倍)の優良企業です。
【総合評価】
- 売上高の増収(+712億円)に比例して変動費も増加(+669億円)しました。
- 売上高貢献利益率は対前年度から横ばいで7.3%を維持しています。前述調査によると平均値は7.1%なので、まずまずの水準です。
- 固定費が微増(+1億円)しましたが、それ以上の貢献利益の増加(+42億円)を確保した結果、当期の経常利益は増益(+41億円)となりました。
- 2020年3月期も対前年度で増収増益の良い経営成績でした。しかし、売上高に対する経常利益率は改善の余地があります。
- 財務面では、自社のカネの出どころであるB/S右側の純資産(自己資本)が、対前年度+146億円となりました。
- 一方、カネの運用先であるB/S左側の総資産では、現金以外の資産が増え+319億円となりました。純資産の増額だけで賄えなかった173億円のうち、55億円は手持ちの現金から、残りの118億円は負債から調達しています。なお、負債の増額は買掛金の増加によるもので、借入金は短期・長期ともに減少しています。つまり、支払いのツケの増加によるもので、外部から直接資金を調達したことによる増加ではありません。
- 総資産の増額は固定資産(主に機械装置及び運搬具)によるもので、こちらは事業に繋がる投資だとも考えられます。今後、経営活動への寄与(収益改善)が期待されます。
【その他】
- 新型コロナウイルスの影響は収束することなく、再び拡大が懸念されています。医療機関への負担やダメージも懸念されます。各卸業者の貢献利益率などをメルクマールに、仕入価格交渉をしっかりと行いましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
(公開日 : 2020年12月29日)