工藤高の医療行動経済学【SAMPLE】
中長期経営計画のBCP(業務継続計画)策定が必要
2021年介護報酬改定では事業者にBDP策定が義務化された
昨年2021年4月の介護報酬改定では新型コロナ禍をふまえて「感染症や災害への対応強化」が打ち出され、全ての介護サービス事業者を対象に「BCP」(Business Continuity Plan:業務継続計画)の策定、研修の実施、訓練の実施が義務づけられた。BCPとは「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のこと」である。(内閣府「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-2015年8月改定)(アンダーラインは筆者)介護事業所に義務づけられたのは、感染症や災害が発生した場合でも必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するためである。ただし、BCP策定には2024年まで3年間の経過措置が設けられている。
一方、診療報酬においては災害拠点病院では策定が義務づけられており、DPC /PDPSの機能評価係数Ⅱ「地域医療係数」の評価項目「災害」において「災害拠点病院の指定(0.5P)」とされている。つまり、災害拠点病院ではBCPが義務化されている。さらに2022年診療報酬改定ではBCP策定が任意ではあるが、策定すれば地域医療係数で「災害拠点病院以外(0.25P)とされた。
災害、感染症だけではなく経営環境変化対応がBCPに求められる
BCPが注目されたのは2011年に発生した東日本大震災であった。診察可能な災害拠点病院には通常の数倍の負傷者が搬送されライフラインの復旧にも時間を要すなど、病院の診療継続に課題が山積する中での対応を余儀なくされた。また、2020年2月からの新型コロナ感染症パンデミックや台風による洪水や土砂崩れなどの自然災害の頻発によって医療機関や介護施設にはBCP策定の重要性が増している。
※2023年4月26日掲載記事。