診療報酬深堀りニュース(2024年度改定関連)
新設の地域包括医療病棟が示唆するもの
(執筆者)株式会社MMオフィス / 関東学院大学大学院非常勤講師 工藤高
今回は久しぶりの超メジャー改定
2月14日の答申で2024年度診療報酬改定の点数と「注」の部分が明らかになった。細かな施設基準等の告示・通知は3月5日予定なので、現時点はまだ詳細は不明である。今回は昨年12月下旬の中医協総会で突然に登場し、一気に新入院料創設となった「地域包括医療病棟入院料」について、現在の答申内容に基づいて俯瞰してみたい。
トリプル改定となった今改定は久しぶりの“超メジャー改定”である。筆者も1982年の病院入職以来、42年に渡り診療報酬改定をウォッチしてきたが、介護保険制度(介護報酬)が創設された2000年度改定、7対1入院基本料(当時)が新設された2006年度改定、2018年同時改定を凌駕するような内容である。ちなみに筆者の定義は、介護報酬との同時改定と病院収入の6〜7割を占める入院料に新基準ができた場合をメジャー改定としている。入院料に関しては2014年の地域包括ケア病棟入院料(地ケア)創設以来となる。今回もそうだが、ともに「地域包括」に続く「ケア」と「医療」になっているのは、改定の基本視点2で示された「ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化」とリンクしている。
2024年新設の地域包括医療病棟入院料は、高齢救急患者等に一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供する病棟への評価の特定入院料で、看護配置は10対1となる。表のように「一般病病棟からの院内転棟」は“5分未満”なので、ほぼ不可能となっている。また、「救急車等で緊急に搬送された患者または他院で救急患者連携搬送料(下り搬送を評価した新設項目)を算定し当院に搬送された患者の割合が1割5分以上」というハードル設定がなされた。
附帯意見で10対1は再編を含めて評価を検討
2024年改定で当初は地ケアで高齢患者の救急に対応すると思われていたが、中医協の議論において地ケアは看護配置13対1なので難しいとの意見が出た。しかし、地ケアで看護職員配置加算を取得すれば実質的に10対1になり、多くの地ケアでは同加算を届け出ているのだが、中医協の議論ではなぜかそこは無視されていた。
答申の際に出された次回改定以降への宿題となる附帯意見において「地域包括医療病棟の新設に伴い、10対1の急性期一般病棟については、その入院機能を明確にした上で、再編を含め評価の在り方を検討すること」とされた。支払側の意見として「現在の入院料2〜6を全て地域包括医療病棟に移行すべき」という過激な意見もあった。その未来図は急性期・回復期に関して「急性期一般入院料1」(7対1)、「地域包括医療病棟」、「地ケア」の3類型による機能分化を示唆しているのだろう。地域包括医療病棟には様々な高いハードルがあるので、改定後に一気に増加することは難しいと思うが、数回の改定を経ての誘導ならば上記のストーリーも可能性は高い。
※ IQVIAソリューションズジャパン合同会社ユート・ブレーン発行「卸ニュース」2月号筆者連載を加筆訂正したものです。 ※ 本記事は「Obelisk -オベリスク-」の共通コンテンツ「工藤高の医療行動経済学」で配信しているものを一般公開したものです。