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≪サーバー保守学≫
医療現場のサーバーやシステム保守運用業務に役立つ情報を定期的に配信しています。
サーバ保守学(2)
(執筆者)亀田医療情報株式会社 塚田智
みなさん、こんにちは、サーバー保守学第2回です。前回は「保守業務の方針を決めて、多忙な仕事にメリハリをつける」と題して、限られた人員と作業量で効果的な保守業務を実施するために、成果目標を積み重ねるかジャンプアップするか選択してみてはどうか、という話題でした。
今回は、予期せぬシステム停止などの重大な障害に冷静に対応するためにどんな備えをしておくか、というお話をしていきます。
システムに障害発生!連絡する先は?
1.システム障害の種類に応じてしっかり備え
電子カルテをはじめとする情報システムを運用していく過程において、システムの障害は避けられないものです。障害を削減防止することも大切ですが、障害の影響範囲をできるだけ小さくし迅速に解決するために、障害時の対応を事前に決めておくことが重要です。
障害の種類はさまざまです。マスターを変更したら一部の画面が崩れて表示された、テスト環境に新規の薬品を登録したがオーダーできない、という日常業務に影響しない比較的小規模な障害。連携機能(インターフェイスプログラム)が停止し検体検査システムにオーダーが取り込まれなくなった、栄養システムのサーバーの電源が落ちて食札が印刷できない、といった部門業務に影響する障害。ネットワークが不通となり外来棟の全PCが使えない、電子カルテのデータベースが停止し診療業務ができない、などの院内全体に影響する重大な障害などが想定されます。
障害の種類や影響範囲に応じて、紙などの代替運用への変更基準と代替運用のための業務マニュアルの整備や、障害発生から運用変更や事後報告までの院内の連絡方法と患者さんへの広報を決めて院内に周知しておきましょう。
2.重大障害には、自分ひとりで対応しない
業務停止のような重大障害に対して自分一人で解決しようとするのは危険です。対処する事柄が多く集中するのに加え、素早く冷静な判断が必要になり、とても一人で対応できません。もし一人で対応できる自信があっても、より良い対応をするために、一人ではなく複数人で対応できる体制にしておきましょう。
外来患者が多い病院で30分以上の業務停止になるようなら、院内で障害対策会議の招集が必要になるでしょう。システム管理者はこの会議に参加し正確な情報を提供しつつ、早急にシステムを復旧させる必要があり、1つの身体で両方をこなすことは不可能です。せめて会議に参加する人と現場対応は別の人ができるようにしておくべきでしょう。
複数人で対応することで、多くの人が障害対応を経験できます。障害はスキル獲得のチャンスでもあります。このチャンスを独り占めしてはいけません。また、障害対応の経過を病院全体で共有することで対応の透明化ができ、職員も障害時の運用に的確に対応できます。
3.遠慮なく業者を巻き込む
システムの復旧にはハードウェアやソフトウェアを提供している外部業者の協力も不可欠です。重大な障害には、なるべく早い段階で遠慮なく業者を巻き込みましょう。それを迷惑と思う業者はいません。業者にとって障害対応は腕の見せ所です。業者としての知識や経験を活かして、お客様の障害を解決することで信頼を勝ち取るチャンスと捉えているでしょう。
障害時に業者がスムーズに対応できるように、日頃から障害対応の手順を業者とも相談しておきましょう。平日の日中と夜間休日では連絡先が異なる場合もあります。障害時に慌てていても間違えないような方法で手順と連絡先を表示しておきましょう。とても原始的な方法ですが、レストランのメニューのように、大き目の紙に書いて冊子にしておくかクリアフォルダーに入れておくのが便利だと思います。
連絡先の文書が共有ドライブに保管されていてネットワークの障害で共有ドライブにアクセスできなかった、サーバー室に掲示してあったが施錠されており入室できなかった、などという笑い話のようなことも実際に発生します。また、休暇を取っていて自分が対応できないこともあります。一般事務の職員でも対応できるような方法にしておきましょう。
この手順と連絡先を関連する業者にも共有しておくのが良いでしょう。手順の間違いや連絡先の変更を指摘してもらえますし、関連する業者間で直接連絡してもらうことも期待できます。