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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。

決算書の簡易診断 No.5 アルフレッサホールディングス株式会社

アルフレッサホールディングス株式会社 簡易B/S、P/L

【決算書の簡易診断とは】

  1. 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
  2. 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。


【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?

  1. 2019年度3月期時点の負債純資産合計は13,419億円で、対前年度+45億円の増加となっています。
  2. そのうち、負債合計は8,999億円(対前年度▲16億円)、自己資本(純資産)は4,421億円(対前年度+61億円)です。負債純資産合計よりも負債合計が小さいので債務超過ではありません。
  3. 自己資本比率は32.9%(※自己資本=純資産としています)で、前年度より+0.3ポイント増となっています。
  4. 年商10億円以上の卸売業の2018年度の自己資本比率の平均値33.8%(財務省の法人企業統計調査による)と比較するとやや低い値です。
評価「可」

【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?

  1. 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は448億の黒字で、対前年度+30億円の増加となっています。売上高営業利益率は1.7%で、対前年度+0.1ポイントの上昇です。
  2. 当期の正常収益力を表す経常利益は551億の黒字で、対前年度+33億円の増益です。
  3. 売上高経常利益率は2.1%で+0.1ポイントの上昇です。
  4. 前述の調査によると2018年度の売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ1.0%、2.8%です。それらと比較すると、まずまずの水準にあると考えられます。
評価「可」

【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?

  1. 損益分岐点比率は72.6%で良い水準をキープしています。対前年度では▲0.6ポイントの改善となっており、生産性の向上が伺えます。
評価「良」

【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?

  1. 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は0.94ヶ月(対前年度+0.05ヵ月)で、判断基準値1.5ヶ月を大きく下回っています。事業規模にしては手元の現預金のストックが少ない印象です。
評価「不可」

【総合評価】

  1. 2019年3月期は対前年度で増収増益の良い経営成績ですが、売上に対する利益率はやや低く、採算構造についてはまだ改善の余地がありそうです。
  2. 自己資本比率は決して低い水準ではありませんが、財務面でも改善の余地がありそうです。
  3. 金額のみに注目してしまうと、額の大きさから十分だと判断してしまうことがあるので注意が必要です。売上高や総資産に対する比率、固定費対貢献利益の比率などにも注目することで、利益水準や財務バランス、採算構造が適正か、動向に問題がないかのチェックができます。
評価「可」

【その他】

  1. 2018年度(2018年4月~2019年3月)は薬価改定年度で、薬価等の診療報酬は▲1.33%のマイナス改定でした。それにもかかわらず、アルフレッサホールディングスの貢献利益率は対前年度+0.2ポイントの増加で、7.6%に上昇している点に注目です。対医療機関向けの価格交渉が奏功した結果とも言えます。


  2. 会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。


    また、診療報酬改定に関する情報は「会員制倶楽部オベリスク」にて随時配信中です。ご興味のある方は併せてご検討ください。

(公開日 : 2019年11月26日)