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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。

決算書の簡易診断 No.4 株式会社エスアールエル

株式会社エスアールエル 簡易B/S、P/L

【決算書の簡易診断とは】

実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。

簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。


【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?

  1. 2019年度3月期時点の負債純資産合計は743億円で、対前年度▲20億円の減少となっています。
  2. そのうち、負債合計は214億円(対前年度▲62億円)、自己資本(純資産)は529億円(対前年度+42億円)です。負債純資産合計よりも負債合計が小さいので債務超過ではありません。
  3. 自己資本比率は71.2%(※自己資本=純資産としています)で、前年度より+7.3ポイント増となっています。
  4. 第3回で取り上げた株式会社ビー・エム・エルよりも高い水準であることからも、高水準であることが分かります。
評価「優」

【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?

  1. 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は50億の黒字ですが、対前年度▲31億円の減少となっています。売上高営業利益率は5.1%で、対前年度▲3.3ポイントの低下です。
  2. 当期の正常収益力を表す経常利益は59億の黒字で、対前年度▲49億円の大幅減益です。売上高経常利益率は6.0%で▲5.2ポイントの低下です。
  3. 売上高営業利益率、売上高経常利益率は良い水準をキープしています。ただし、どちらも前年と比べて大きく低下しています。これは売上高が+22億円の増収となったものの、変動費が増収幅を大きく上回る+52億円となったため、貢献利益が▲31億円と大きく減少したことによります。このことは、貢献利益から差し引く販売費及び一般管理費(以下、販管費)は前年度からほぼ横ばいになっている点、営業利益に加える営業外損益の減少幅が売上高の増収幅を下回っている点から分かるかと思います。
評価「良」

【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?

  1. 損益分岐点比率は74.7%で良い水準をキープしています。ただし、対前年度では+15.6ポイントと悪化しており要注意です。
  2. これは、販管費以外の固定費が対前年度+18億円で313億円に増加する一方、貢献利益が対前年度▲31億円の減少となったためです。
  3. 売上高は増収しているものの、生産性の低下が伺えます。
評価「良」

【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?

  1. 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は0.10ヶ月(対前年度▲0.09ヵ月)で、判断基準値1.5ヶ月を大きく下回っています。ただし、キャッシュ・マネジメントシステムにより親会社のみらかホールディングス株式会社が資金を一元管理しているため、算出値だけでは判断出来ません。
  2. なお、みらかホールディングス株式会社の連結財務諸表による手元現預金月商倍率は2.23ヵ月[=現金及び預金337億円÷(当期売上高1,814億円÷12ヶ月)]と安定した水準です。
評価「-」

【総合評価】

  1. 2019年3月期は対前年度で増収減益となっていますが、まずまずの経営成績です。
  2. 売上高が増収してもそれ以上に費用が大きければ、営業利益・経常利益は減少することにご注目ください。大事なのは売上高を伸ばすことではなく、貢献利益と固定費の動きを追う採算戦略の思考が鍵です。
  3. 今回のケースでは変動費の上昇が減益に起因していることが明らかですので、変動費の中身や今度の動向に注視することが必要になります。変動費の上昇は外部変動費そのものの上昇以外に、製品の付加価値率(変動費率)の変動[⇒技術力の変数の改革(内部マネジメント可)や、プロダクトミックス(品目構成)の変化(競合による付加価値の高い主力品の売り負け・衰退、高い新製品の登場、市場の構造変化についていけてるか、ついていけてないか=外部×内部の戦略要因)]が関係しています。
  4. 財務面は親会社や関連会社との関係性から一概には言えませんが、自己資本比率は高く安定しています。
評価「良」

【その他】

第4回目は、単体では上場していませんが、株式会社ビー・エム・エルと並び国内3大センターのひとつである企業を取り上げてみました。

こちらの検査会社は対前年度で増収減益ですが、経常利益率は6.0%と良い水準をキープしています。ご自身の医療機関の経常利益率と比較するとどうでしょうか。

2019年10月の診療報酬改定では一部を除き検査料等は据え置きとなりました。したがって、検査だけでみると、医療機関の売上は変わらないのに対し、外注検査費や委託料、試薬料などの原価部分は最低でも消費税分増加することになります。貢献利益の流出となりますのでご留意ください。



会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。


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