会計力 F/U NO.6
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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.6 株式会社メディパルホールディングス
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 2019年度3月期時点の負債純資産合計は16,179億円で、対前年度▲9億円の減少となっています。
- そのうち、負債合計は10,251億円(対前年度▲211億円)、自己資本(純資産)は5,928億円(対前年度+202億円)です。負債純資産合計よりも負債合計が小さいので債務超過ではありません。
- 自己資本比率は36.6%(※自己資本=純資産としています)で、前年度より+1.3ポイント増となっています。
- 年商10億円以上の卸売業の2018年度の自己資本比率の平均値33.8%(財務省の法人企業統計調査による)を上回る水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 当期の本業の基礎収益力を表す営業利益は498億の黒字で、対前年度+56億円の増加となっています。売上高営業利益率は1.6%で、対前年度+0.2ポイントの上昇です。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は639億の黒字で、対前年度+66億円の増益です。
- 売上高経常利益率は2.0%で+0.2ポイントの上昇です。
- 前述の調査によると2018年度の売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均値は、それぞれ1.0%、2.8%です。それらと比較すると、経常利益率がやや低い水準にあると言えます。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 損益分岐点比率は72.5%で良い水準をキープしています。対前年度では▲2.3ポイントの大幅改善となっており、生産性の向上が伺えます。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は0.80ヶ月(対前年度+0.02ヵ月)で、判断基準値1.50ヶ月を大きく下回っています。事業規模にしては手元の現預金のストックが少ない印象です。
【総合評価】
- 2019年3月期は対前年度で増収増益の良い経営成績です。貢献利益の伸びを確保する一方で販売費及び一般管理費を削減しており、生産性の向上に取り組み、採算構造のシンボル指標である損益分岐点比率を引き下げ(=改善)していることが分かります。
- しかしながら、年商10億円以上の卸売業の平均値と比べると、売上に対する経常利益率はやや低く、採算構造はまだ改善の余地がありそうです。
- 財務面では、上記採算戦略によって自己資金(利益剰余金)の伸びを確保しつつ、資産の回転アップによって総資産9億円を圧縮することで余裕資金を生み出し、負債を返済しています。財務運用の基本(自己資金の伸びA>総資産の伸びBによる余裕資金A-Bで借入金返済)戦略によって、財務体質の改善に成果を上げているといえます。その結果、財務バランス改善のシンボル指標である自己資本比率は対前年度+1.3ポイント増えています。
【その他】
- アルフレッサホールディングス同様に貢献利益率が増加(対前年度+0.1ポイント)している点に注目です。
- 医薬品等の売値を自由に変えることの出来ない医療機関は、自身の貢献利益を守るために、卸業者ときちんと交渉し、適正な価格で仕入れることが必要です。
- 参考までに、医療用医薬品等卸売事業に限って見ると、売上高(内部取引除く)は前年度21,171億円から当年度21,010億円の▲161億円の減収ですが、営業利益は前年度194億円から225億円と+31億円の増加です。ここから販売費及び一般管理費の▲12億円による増加効果をすべて差し引いても+19億円の増加となります。
- 2018年度(2018年4月~2019年3月)の診療報酬改定による薬価等のマイナス改定(▲1.33%)のなか、利益率が上がった背景には少なからず医療機関の負担増があると言えるでしょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
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(公開日 : 2019年12月26日)