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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.36 クオールホールディングス株式会社
【決算書の簡易診断とは】
実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
負債合計額が総資産額よりも小さいので債務超過ではありません。
2022年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度+21億円となり、439億円に増加しました。これに対し、お金の運用先である総資産は対前年度▲46億円で、960億円に減少しました。
この結果、負債は対前年度▲66億円で521億円に減少しました。
財務体質を表す自己資本比率(※純資産=自己資本としています)は、対前年度+4.1ポイントで45.7%に改善しています。二期連続で改善しています。
売上高全体の80%以上が調剤薬局事業によるものである上場大手企業4社の自己資本比率の平均値38.1%注1を上回る良い水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
2022年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+25億円で99億円に増加しました。売上高営業利益率は対前年度+1.3ポイントで5.9%に改善しています。
当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+27億円の増益で、黒字額は101億円に拡大しました。売上高経常利益率は対前年度+1.5ポイントで6.1%に改善しています。
営業利益、経常利益のどちらも増加に転じており、収益力の改善が伺えます。
上述した上場大手企業4社の平均値(売上高営業利益率は4.1%、売上高経常利益率は4.4%)を上回る良い水準です。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
固定費の回収パワーである貢献利益は対前年度+21億円しています。対して、固定費は▲6億円の削減となりました。その結果、損益分岐点比率は、対前年度で▲8.5ポイントで56.4%に下がっており、採算構造は大きく改善しています。
上述した上場大手企業4社の平均値(75.4%)を下回る良い水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度▲0.25ヵ月で1.20ヶ月に下がっています。判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回っており、資金繰り面に不安があります。
上述した上場大手企業4社の平均値(1.35ヵ月)を下回っています。
【総合評価】
対前年度で増収増益の良い経営成績でした。売上高を増収(+44億円)させる一方、変動費比率を下げました。その結果、固定費の回収パワーである貢献利益は+21億と増え、貢献利益率は+0.9ポイントの改善で13.9%に上昇しました。更に固定費を▲6億円削減した結果、当期の経常利益は+27億円の増益となり101億円となりました。直近四期中における最大利益を記録しています。採算構造はかなり改善しました。
財務面では、利益剰余金の厚みが増えました(+44億円)。しかしながら、連結子会社の完全子会社化に伴う資本剰余金の減少(▲22億円)があったため、自己資本は+20億円の増加にとどまりました。これに対し、資金運用の総資産は▲46億円の減少(うち、現預金残高は▲30億円)となりました。
事業活動で得た自己資金と手元資金を使って多額の負債を返済(▲66億円)した結果、自己資本比率はかなり改善しました。しかしながら、手元現預金が大きく減少しており、資金繰りに留意が必要です。
今期は採算・財務ともかなり改善努力し、体質はかなり改善した印象です。
【その他】
貢献利益率は13.9%と非常に高い水準をキープしています。医薬品などの仕入れ交渉時のメルクマールとして参考にしましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。