中村十念の考えるヒント十ヵ条
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[MG10]No.47 財務省とのデータ戦争を考えるヒント十ヶ条
(執筆者)俯瞰マネジメント研究会 | 中村十念
1.財務省が「機動的調査」と銘打って、データ戦争を仕掛けてきた。
土俵は2023年度診療報酬改定、ターゲットは診療所である。理屈は診療所は儲け過ぎだから、診療報酬を大幅に引き下げよという主張である。
2.データ元は、医療法人診療所のもの。医療法人は決算終了時に、都道県知事宛に簡単な決算報告の文書を提出する。内容は損益については、事業収入・事業外収入、事業費用・事業外費用、経常利益である。貸借については、資産、負債、自己資本(資本・利益剰余金)ぐらいの簡素な項目である。この医療法人診療所のデータを集めて分析したという。
3.この項目で経営分析をしろといわれても、通常のセンスのアナリストは尻込みする。 土俵が診療報酬改定なのに、保険診療に関する項目がひとつもない。財務省のアナリストも分析してみたものの、データ項目が少ないのは致命的なことに気が付く。
4.そこでデータの中で一番数の多い(それでも、経常利益と利益剰余金の2つであるが)「利益」に着目することになったようだ。データを取った期間の2020年、21年、22年はコロナ禍と重なる異常事態の年である。経営データに歪みがでるのも常識だ。
であるのに、「医療法人診療所のうち75.9%が黒字」(財政制度等審議会社会保障部会の資料)と拳を振り上げてしまう。黒字がまるでいけないことのような言い方である。赤字を嫌う世間の見立てとは真逆の煽りである。
5.利益剰余金の分析はもっと過激である。
診療所の利益剰余金が高伸びしているので、「診療報酬単価を引き下げ、保険料負担減、窓口負担減につなげる必要」と述べている。わずかなデータからは、保険診療の伸びと利益剰余金の伸びがリンクしているかどうかさえ論証できない。ここまでの強弁は品格が問われる。
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