診療報酬深堀りニュース(2024年度改定関連)

特定疾患療養管理料や外来管理加算は内科系医療機関の経営補填というミッション

(執筆者)株式会社MMオフィス / 関東学院大学大学院非常勤講師 工藤高

1.かかりつけ医の登録制や認定制は見送られた

2024年度から実施の第8次医療計画では医療提供体制改革を目指す「地域医療構想」を進める一環として、外来医療機能の明確化、医師の業務範囲を見直す「タスクシフト」などが予定されている。「かかりつけ医機能」に関しては本年5月に改正医療法が成立して、2024年4月以降は国民や患者が適切な医療機関を選択する施策が講じられる。

かかりつけ医の定義は日本医師会・四病院団体協議会の合同提言では、「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」としていた。改正医療法に対する議論では診療側の日医、日病ともに「かかりつけ医機能」は医療機関が自主的に届け出ることが望ましいという考えであった。これに対して、支払側の健保連はかかりつけ医を認定制にした上で、国民・患者が任意でかかりつけ医1人を登録する仕組みを提案していた。かかりつけ医・医療機関に対する診療報酬や保健事業への支払いは今後の検討課題とした。財務省も同様にかかりつけ医の制度化を求めていた。

実際は支払側の主張する登録制や認定制は見送られて、現在も実施されている「医療機能情報提供制度」の刷新と2025年4月には医療機関が自院の機能を報告する「かかりつけ医機能報告」が開始される。入院機能を中心に報告する「病床機能報告」の外来版である。改正医療法と健康保険法(診療報酬改定)はクルマの両輪のような機能で医療提供体制を構築していく。

2.かかりつけ医機能等を評価した6つの点数の体系的な整理

来年4月の診療報酬改定では、今回の改正医療法をバックアップするような変更が行われる。外来機能は200床以上で紹介外来中心の医療機関ならば本年8月に都道府県が公表した「紹介受診重点医療機関」への手上げが必要になる。一方、200床未満でかかりつけ医機能を強化したい病院は「在宅療養支援病院」の届出が必要になるだろう。

中医協では改定に向けての外来医療の論点としては、(1)医療DXの推進も踏まえた診療報酬の在り方、(2)生活習慣病対策、外来機能の分化を推進する観点からの診療報酬の在り方、(3)今後のオンライン診療の適切な評価が示されている。(2)における「かかりつけ医機能」等を評価した診療報酬には下記がある。

【かかりつけ医機能等を評価した診療報酬】
  1. ① 地域包括診療加算・地域包括診療料(かかりつけ医機能の評価)
  2. ② 認知症地域包括診療加算・認知症地域包括診療料(かかりつけ医機能の評価)
  3. ③ 小児かかりつけ診療料(かかりつけ医機能の評価)
  4. ④ 機能強化加算(かかりつけ医機能の評価)
  5. ⑤ 生活習慣病管理料(6つの疾病管理の評価)
  6. ⑥ 特定疾患療養管理料(治療計画に基づく療養上の管理の評価)

診療報酬改定に向けて①〜⑥の算定要件や対象疾患等の見直し等を行い体系的に整理するという方向性が出ている。本年11月10日に開催された中医協総会「外来(その3)」においては⑥特定疾患療養管理料についての論点が示された。同点数は筆者が生まれた1958年に「慢性疾患指導料」として設定された65年の古い歴史を持つ指導料点数である。

3.特定疾患療養管理料や外来管理加算は内科系医療機関の経営補填という機能

特定疾患療養管理料は慢性疾患を主病の患者に対して、「栄養、安静、運動その他療養上必要な指導をした場合の評価」であり、2006年に現在の形になった。算定対象になる主傷病名は高血圧症、脂質異常症、糖尿病、悪性新生物などであり、月2回に限りの算定で「診療所の場合 225点」「許可病床数100床未満147点」「許可病床数100床以上200床未満87点」と医療機関の規模が小さくなるほど高くなっている。筆者が病院に就職した1982年当時は200床以上病院でも算定可能だったが、その後の医療機関機能分化政策で200床未満と診療所限定となった。

支払側は⑤生活習慣病管理料には詳細な療養計画書の作成と計画書を用いた患者への説明が求められるが、特定疾患療養管理料は「別に厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合」とそうしたことが求められていないことを指摘している。 もともと特定疾患療養管理料は検査、投薬だけではなく、処置・外来手術やリハビリ等の出来高収入がある外科系医療機関に対して、問診と指導中心になる内科系医療機関の医師に対する技術料として経営補填的要素も含めて評価されたものである。今回、診療側が廃止という暴論を口にした処置・手術やリハビリ、内視鏡検査等をしなければ算定できる再診料の加算である「外来管理加算」52点(かつては内科再診料)も同様に経営補填的な意味合いが強い。生活習慣病管理料のような詳細な療養計画書作成等の様々なデューティを特定疾患療養管理料に課すことは「医師の働き方改革」にも逆行するだろう。


※(株)メデュアクト「医業情報ダイジェスト」2023年10月号の筆者連載を加筆訂正したものです。

※ 本記事は「Obelisk -オベリスク-」の共通コンテンツ「工藤高の医療行動経済学」で配信しているものを一般公開したものです。

(公開日 : 2023年11月24日)
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