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≪サーバー保守学≫
医療現場のサーバーやシステム保守運用業務に役立つ情報を定期的に配信しています。

サーバ保守学(5)

(執筆者)亀田医療情報株式会社 塚田智 


みなさん、こんにちは、サーバー保守学第5回です。前回は台風に伴う停電とシステム障害のお話でした。今回は停電や障害時の運用に必要なシステムのバックアップと、そこからシステムを復旧させるために必要なデータのバックアップのお話をします。バックアップの対象はデータの一部からシステム全体まで、さまざまな範囲とともに多様な方法があり、費用もまちまちのため、どのようなバックアップが自院に必要なのか判断が難しいと思います。バックアップを計画するための考慮点を整理して、自院に最適なバックアップは何かを考えましょう。

  

必要なバックアップできてますか?

1.何のために何をバックアップするか

最初に確認したいのは、バックアップの目的と対象です。以下のように整理してはどうでしょうか。

(1)データを復旧するため、DBやファイルのデータのコピーを保管しておく

(2)システムを復旧するため、システムのイメージを保管しておく

(3)障害時に縮退した運用をするため、参照機などの障害用のシステムを準備しておく

(4)障害時でも平時に近い運用を継続するため、システムを二重化しておく

(1)のデータのコピーがあれば、障害でディスクが破損した場合にディスクを交換した後にデータを復元することができます。(1)のシステムのイメージがあれば、サーバーのハードウェアを交換しても短期間でシステム全体を復元できます。(3)と(4)は災害や障害時でもシステムを継続して運用することを前提にして、運用の範囲を決めることでバックアップの方法が異なります。これらを組み合わせて自院に必要なバックアップを選択しましょう。


2.どこにバックアップするか

次に確認するのは、バックアップをどこに置くかです。候補として以下のような場所が考えられます。

A.サーバー室 B.サーバー室以外の院内 C.院外の関連施設 D.データセンター E.クラウド

1.の(1)のデータのコピーは、数年前まではテープに取得するのが一般的でした。テープという物理媒体を前提にすると、サーバー室に保管すること以外は運用が難しく、少し工夫してテープを日常的に運べる範囲として、サーバー室から離れた院内の高層階などに保管する運用がありました。現在ではテラバイト単位のストレージとその転送に必要なネットワークが比較的安価に入手できるため、院外、データセンター、クラウドなど幅広い選択肢があります。今後の発展性に期待するならクラウドのストレージサービスに保管することを検討しましょう。

1.の(3)の障害用のシステムも従来は、サーバー室か院内の別の場所に構築するのが一般的でしたが、ネットワークの低価格化により、同一法人内の関連施設に設置することも増えました。さらに、電子カルテの外部保存のガイドラインの改定などもあり、医療機関内ではなく民間のデータセンターやパブリッククラウドに構築することも可能になりました。データセンターやクラウドに構築しておけば、災害があってもシステムは稼働していることを前提に運用を計画できます。その場合はネットワークや電源の確保に留意しましょう。

バックアップの場所は、1つではなく複数確保する場合もあります。データのコピーは日常的に使うためにサーバー室内の共有ストレージに保管しているが、災害時に使うためにクラウドにも保管しておく、という構成になります。複数のバックアップがあると安心感は増しますが、確実にバックアップされているか確認するなど管理ポイントが増えることは念頭においておいてください。


3.ノートPCの参照システムは実用的なのか

比較的小規模な施設で、ノートPCを参照機として使っている事例もあります。最近のノートPCは1TB程度のストレージを搭載でき、100床程度の病院なら数年分のデータを保管できるようです。ノートPCにはバッテリーが内臓されており持ち運びできるので、本番機と切り離しても単体で1つのシステムとして動作し、単独で参照機として使えるため、災害やシステム障害に強いのです。もちろん運用は制限されており、1台のノートPCを救急の診察室に設置して、災害時に来院する緊急度の高い患者さんを対象として使うという計画のようでした。

この方法は低コストで一見良さそうに思えますが、欠点もあります。参照システムとしていつでも使える状態にしておくため、ノートPCを24時間連続稼働する必要があります。ノートPCは長時間の連続稼働を想定していな機種がほとんどで、連続稼働しているうちにOSがハングしてデータのコピーが失敗していたり、ノートPCのバッテリーが早期に劣化して、外部電源のない状態では1、2時間しか使えなくなるなど信頼性に欠けます。また、ノートPCに多くの診療データを保管することで、盗難や紛失した際の影響度が大きいため保管中も運用中も厳重に管理しなくてはなりません。ノートPCを参照システムにすることは、実用的には制約の多い方法だと思います。


4.自院に適したバックアップとは

以上のようにバックアップを整理してみて、みなさんのシステムでは目的に合ったバックアップが整備されているでしょうか。目的を決めても費用の問題で実施できないこともあります。台風による災害が顕在化しているこの時期に明確な目的を示せば、経営者にも納得してもらいやすいと思います。もう一度、みなさん自身で自院に適してバックアップとは何か考え直してみましょう。