会計力 F/U NO.27
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≪決算書の簡易診断≫
上場している様々な企業の決算書の簡易診断結果を提供しています。
決算書の簡易診断 No.27 株式会社エスアールエル
【決算書の簡易診断とは】
- 実在する企業の決算書(主に貸借対照表と損益計算書)の中身を4つのチェックポイントから簡易的に経営診断したものです。各チェックポイントを独自の判断により「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価しています。
- 簡易診断結果は十分な経営分析ではありません。参考としてご覧ください。
【チェックポイント1】債務超過に陥っていないか?
- 総資産額よりも負債合計額が小さいので債務超過ではありません。
- 2021年度3月期は、お金の出所である自己資本(純資産)は対前年度+36億円となり303億円に増えました。一方、お金の運用である総資産は対前年度+206億円の大幅増となり、1,081億円に増えました。自己資本の増加で賄いきれなかった分を外部から調達した結果、負債合計は対前年度+170億円の増加となりました。
- 財務体質を表す自己資本比率(※自己資本=純資産としています)は、対前年度▲2.5ポイントで28.0%に下がっています。まずまずの水準です。
【チェックポイント2】営業利益・経常利益は黒字か?
- 2021年度3月期の本業の基礎収益力を表す営業利益は対前年度+72億円の大幅増で130億円に増加しました。売上高営業利益率は対前年度+4.9ポイントとほぼ倍増し、10.5%の2桁台に改善しました。
- 当期の正常収益力を表す経常利益は、対前年度+74億円の大幅増益となり、135億の黒字です。売上高経常利益率は対前年度+5.1ポイントと倍増し、11.0%の2桁台に改善しました。
- 売上高営業利益率、売上高経常利益率のどちらも大幅改善しており、収益力が向上しています。
【チェックポイント3】損益分岐点比率は100%を下回っているか?
- 損益分岐点比率は対前年度では▲15.8ポイントと大きく改善し、58.3%に下がりました。優良な水準です。
【チェックポイント4】現・預金残高は月商(ひと月の売上高)の1.5ヶ月分あるか?
- 運転資金や手形の不渡りなどの不時に備えた手元現預金月商倍率は対前年度▲0.01ヵ月となり0.08ヶ月に減少しています。判断基準値である1.50ヶ月を大きく下回る水準で、資金繰りに注意が必要です。
【総合評価】
- 新型コロナウイルス感染症に係わる検査需要の増加により、売上高は対前年同期で大幅増収(+191億円)となりました。変動費も増加(+104億円)しましたが、固定費回収パワーの貢献利益は大幅増(+87億円)となりました。貢献利益の伸びを下回る固定費増(+16億円)に抑えた結果、経常利益は大幅増益(+74億円)となりました。
- 2021年3月期は、採算面は増収増益の好成績となり、収益力・生産性ともに大幅に改善しました。
- 財務面では、自己資金の源泉の利益剰余金の厚みが+36億円となり、自己資本は303億円に増えています。資金の運用で総資産が+206億円増加しています。内訳は、大半は流動資産によるもので、増収に伴う売上債権増(+70億円)と預け金(+64億円)が占めます。預け金は親会社による余剰資金の吸い上げだと思われます。不足分の外部資金調達+170億円の増加は、主に買掛金・未払金によるもので、財務流動性はキープしています。ただし、手元現預金が手薄い(預け金を考慮しても、手元現預金月商倍率は1.19倍と基準値を下回る)ため、資金繰りに注意が必要です。
【その他】
- 今回のケースからも新型コロナウイルス感染症の検査需要の高まりが臨床検査企業の売上増に大きく貢献したことが分かります。検査薬や検査委託料などの交渉時のメルクマールとして参考にしましょう。
会計の本質的な部分を理解し、貸借対照表と損益計算書の中身を読み解く力をつけることで、より詳細な分析を行うことができます。「絵でつかむ会計力リーダー養成講座」をまだ受講されていない方は是非ご検討ください。
(公開日 : 2021年09月29日)