診療報酬深堀りニュース

2022年度の診療報酬改定率の内訳は現・前総理に忖度内容か?

(執筆者)株式会社MMオフィス / 関東学院大学大学院非常勤講師 工藤高

1.ネットでのプラス改定を望んだ医療提供側の期待はかなわなかった

政府は12月22日に2022年度診療報酬改定率について、診療報酬本体+0.43%、薬価(材料費も含む)引き下げ-1.37%で合計(ネット)で-0.94%と決定した。2000年からの診療報酬改定率は下記グラフのようになる。

図表1 2000年からの診療報酬改定率の推移

グラフのように2016年改定以降は診療報酬本体引き上げ分を薬価引き下げ分が上回り、これで4回連続のネットではマイナス改定となる。新型コロナの世界的なパンデミックでコロナ補助金前の医業利益率が大きく低下している中でネットでのプラス改定を望んだ医療提供側の期待はかなわなかった。マイナス改定を望んだ財務省の顔を立てた改定率となったと言えよう。

2.目玉政策の看護における処遇改善は医療機関が限定されていた

特徴的な点は診療報酬本体+0.43%のうち①看護の処遇改善のための特例的な対応+0.20%、②リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進による効率化−0.10%、③不妊治療の保険適用のための特例的な対応+0.20 %、④小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来−0.10%と内訳の詳細が明確になっている。これで差し引き0.20%となり、診療報酬本体+0.43%のうち、使い道が決まっていないのは残り0.23%に過ぎない。

岸田総理の目玉政策だった「看護における処遇改善」+0.20%は「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関(救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関)」について2022年10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みに使うとした。介護保険の処遇改善加算を参考にするようだ。現時点で詳細は不明だが、該当しない医療機関は蚊帳の外になるのだろうか。私は全医療機関が対象だと思っていたが、認識が甘かったようだ。

さらに看護職だけではなく、看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てる柔軟な運用を認めるとした。しかし、多くの職種に分配するほど医療機関への配布上限額は決まっていると思われるため、職員1人分の取り分は少なくなってしまうだろう。

3.行動経済学からは忖度も説明可能である

先日の衆議院選挙で看護職の賃金引き上げを自民党総裁選で公約に掲げた岸田新総理率いる自民党に投票した医療関係者は多かっただろう。また、「不妊治療の保険適用の特例的な対応」+0.20%も菅前総理が肝入りで訴えていた政策であった。このように今回のプラス改定分+0.40%分は前総理と現総理の総裁選公約に忖度した形となった。これは救急医療管理加算を算定していない、または不妊治療を実施していない医療機関には全く関係がないピンポイントのプラス改定である。それらの医療機関について実質的に診療報酬本体プラス該当分は前述の+0.23%となるわけだ。

筆者のオベリスク連載(4)「工藤高の医療行動経済学」の「行動経済学の古典ゲーム理論『囚人のジレンマ』を病院経営にあてはめる」で書いたが、日本医師会には今後も政府との良好な「大人の関係」という「お互いに黙秘状態で利益は2」が求められるのは間違いない。強烈な対立構造からは2006年小泉内閣時における現在でも過去最大のマイナス改定-3.16%という結果しかない気がする。

(公開日 : 2021年12月27日)
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