診療報酬深堀りニュース

政府による注文が多い2022年改定

(執筆者)株式会社MMオフィス / 関東学院大学大学院非常勤講師 工藤高

1.現総理と前総理へ忖度した改定内容だった

2022年度診療報酬改定率は診療報酬本体+0.43%、薬価(医療材料費も含む)引き下げ▲1.37%で合計(ネット)で▲0.94%となったのは前回お伝えした。特徴的な点は診療報酬本体+0.43%のうち①看護の処遇改善のための特例的な対応+0.20%、②リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進による効率化▲0.10%、③不妊治療の保険適用のための特例的な対応+0.20 %、④小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来▲0.10%と内訳の詳細が明確になっていることだ。看護の処遇改善は岸田現総理、不妊治療は菅前総理の肝いり政策だったため、明らかな「忖度改定」だと前回連載でお伝えした。

2.改革を着実に進める内容も示されている

さらに閣僚折衝では新型コロナ感染拡大により明らかになった課題等に対応するため、良質な医療を効率的に提供する体制の整備等の観点から、次の項目について、中央社会保険医療協議会での議論も踏まえて、改革を着実に進めるとした。

筆者は1982年の病院入職以来、40年に渡り診療報酬改定をウォッチしているが、改定率に関する政府文書で具体的に下記のように多くの項目に注文をつけているのは初めてだ。

  • 【閣僚折衝で示された改革を着実に進める内容】
  • 医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、提供されている医療機能や患者像の実態に即した、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化
  • 在院日数を含めた医療の標準化に向けた、DPC制度の算定方法の見直し等の更なる包括払いの推進
  • 医師の働き方改革に係る診療報酬上の措置について実効的な仕組みとなるよう見直し
  • 外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能に係る診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し
  • 費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制に係る評価の見直し
  • 薬局の収益状況、経営の効率性等も踏まえた多店舗を有する薬局等の評価の適正化
  • OTC類似医薬品等の既収載の医薬品の保険給付範囲の見直しなど、薬剤給付の適正化の観点からの湿布薬の処方の適正化

3.病院は有事なので改定で経営悪化を招く変更はすべきでない

これらを踏まえて、今月末には個別改定項目を示した点数は○点と伏せられた「短冊」が公表され、2月初旬には答申で個々の点数と内容が決定する。3月初旬には告示ということで、細かな通知類も発出される。それについては3月7日、10日の改定セミナーで詳細を解説したい。それまでは本連載においてリアルタイムで改定内容をウォッチして行きたい。

繰り返しになるが、診療報酬本体のわずかなアップ分0.43%の使い道と改革内容が改定率決定の段階で細かく決まっている改定は初めての経験だ。「閣僚折衝で示された改革を着実に進める内容」で「医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、提供されている医療機能や患者像の実態に即した、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化」とある。

「適正化」とは「点数引き下げや施設基準要件強化」を意味するが、2022年改定は2020年2月の横浜港へのクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス入港から始まった2年以上に渡る新型コロナ禍における前例がない改定になる。前回2020年改定で要件強化した看護必要度はコロナ対応病院では2年間経過措置となっている。WAMやTKC調査にあるように病院は医業利益率が大きく低下して補助金頼み経営が多い中で、経営悪化を招くような改定による変更は回避すべきである。具体的には急性期一般入院料1(旧7対1)、看護必要度、地域包括ケア病棟の施設基準について経営が厳しくなるような大幅変更を行うべきではない。医療機関経営にとって、今は平時ではなく、まさしく有事である。改定のプライオリティ(優先順位)は決して2年に1回の定期的な政策誘導ではなく、医療機関の安定経営であろう。

(公開日 : 2022年01月21日)
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