医療法人を考えるヒント No.6

医療法人化を考えるヒントとなりそうな論点10項目を毎月1つずつ公開します。
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医療法人を考えるヒント No.6 最大のリスクは個人に残る借入金

(執筆者)株式会社日本医療総合研究所 中村十念 


1.個人と法人の違い

個人のファイナンスと法人のファイナンスでは、返済の懐の深さが全く違います。個人の借入金は、住宅ローンや子供の学費ローンなどです。個人はそれらのローンを、税引後の所得から返済していくしかありません。ほとんどの場合、納税と借入金返済のダブル支出となります。


2.一般的な法人の場合

法人は、赤字であれば、所得税を払う必要がありません。借入金の返済だけです。概念的にいえば、返済の原資に税金を充当できる場合があるともいえます。

将来性さえあれば、返済のための借入金も可能であろうし、出資金も返済財源に充てられます。

一般事業の場合、まず法人を設立し、法人で資金の調達・返済を行うというのが普通です。


3.医療法人の場合

ところが医療法人の場合、許認可という手続きのために、個人経営のプロセスを挟まざるを得ません。

経営には個人・法人を問わず、ヒト、モノ、情報が必須であり、それを確保するための資金が必要となります。

ところが、いざ医療法人化となるとモノにヒモついた借入金以外、個人から法人に引き継げないことになっているといいます。

なぜモノだけなのか理解に苦しむところです。


4.全体のキャッシュフローバランスが重要

すると個人時代の事業用の借入金が個人に大きく残ることも想定されます。その場合、次のプロセスを辿り、事業全体が潰れてしまう可能性が残ることになります。

(1)返済の対象=純個人ローン+事業用個人残存ローンとなる。

(2)返済の対象を税引後の所得だけでは支払えなくなり、個人のキャッシュ不足となる。

(3)個人のキャッシュ不足を賄うために、理事長報酬を高く設定せざるを得なくなる。

(4)その結果、法人の資金繰りが悪化して、損益も厳しくなる。

(5)法人の将来性が危うくなり、信用力を失い、追加融資不能になりかねない。

キャッシュフロー面で事業全体が潰れないよう、税理士等の働きが重要となります。


  

⇒ 「医療法人を考えるヒント」については「はじめに」をご覧ください。

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