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令和6年に施行される法改正のポイント

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


令和6年がスタートします。今年も重要な労働関係法令の改正がいくつかあります。ここでは主な改正点を解説します。自社に必要な対策の準備を進めましょう。


図1:令和6年より施行される法改正
4月 労働基準法
労働契約法
  • 採用直後だけでなく将来の就業場所や業務の変更範囲も事前に明示することを義務化
  • 無期転換申込の機会や無期転換後の労働条件について書面で明示することを義務化
労働基準法 専門業務型裁量労働制を適用する際に本人の同意が必要に
労働基準法 時間外労働の上限規制の適用猶予期間が終了し、建設事業、自動車運転業務、医師などにも上限規制の適用開始
障害者雇用促進法
  • 週10時間以上20時間未満の短時間労働者である一定の障害者を実雇用率にカウント
  • 障害者雇用率を2.3%⇒2.5%に
改善基準告示 トラック・バス・タクシーなどの運転者の拘束時間をこれまでより短く、休息期間を長く設定
10月 年金改革法 50人超の企業で働く短時間労働者も社会保険の適用対象に

4月転勤範囲等の明示

年収の壁のまとめ

労働条件の明示ルールが変わります。労働基準法では、雇い入れ時に一定の労働条件を明示することを義務付けています。

「就業場所」と「業務内容」は、異動などにより途中で変わることがあるとしても現在は雇い入れ直後の就業場所と業務内容を記載するだけでよいとされています

しかし改正後は、将来の配置転換などによって変わりうる就業場所の範囲と業務内容の範囲も記載することが義務化されます。

厚生労働省が示した労働条件通知書の見本では、就業場所と業務内容について「雇い入れ直後」と「変更の範囲」に分けて記載欄が設けられています。

就業場所と業務内容を一定範囲に限定している場合、たとえば図2のような記載方法が考えられるでしょう。就業場所や業務内容が限定されていない場合は、変更の範囲は「会社の定める場所」「会社の指示する業務」など包括的な表現でもかまいません。

「変更の範囲」は、勤務地限定社員などに限らず、すべての労働者について明示しなければなりません。労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに明示が必要です。
令和6年4月以降に締結される労働契約が対象です。

4月無期転換に関する明示

有期契約労働者の労働条件の明示ルールも変わります。「無期転換制度」に関する明示が義務化されます。

無期転換制度とは、同じ企業(使用者)との間で、有期契約が5年を超えて更新された場合に、有期契約労働者から申し込みがあったとき、無期契約に転換されるというものです。

無期転換制度が導入されてからしばらく経ちますが、一層の周知徹底を図るため労働条件の明示に関して次の内容が改正されます。

  • ①有期契約の更新上限の明示
  • ②無期転換申込機会の明示
  • ③無期転換後の労働条件の明示

1つずつ見ていきましょう。

① 更新上限を明示する

有期契約の「更新上限の有無」と、上限がある場合にはその「内容」の明示が必要になります。内容とは「通算契約期間○年まで」「更新○回まで」といったものです。新たに有期契約を締結するときだけでなく、契約更新をするときにも明示する必要があります。

② 無期転換を申し込むことができる旨を明示する

無期転換を申し込む権利が発生したときは、無期転換の申込みができる旨の明示が必要になります。

③ 転換後の労働条件を明示する

有期契約を無期転換した場合、例えば定年を設けるなどそれまでと労働条件を変更する必要が生じる場合があります。そのため、有期契約の者が無期転換を申し込んだ場合に、どのような労働条件で働くことになるのかを明示することが必要になります。

②と③の明示は、無期転換の権利が発生したときから、有期労働契約を更新する度におこなう必要があります。

この他、有期契約について更新の上限を新たに設けるとき、または短縮するときはあらかじめその理由を労働者に説明することが義務付けられます。

労働条件の明示を怠った場合は、労働基準法で罰則(30万円以下の罰金)も設けられています。4月までに社内の労働条件通知書の書き換えなど、忘れず準備しておきましょう。

4月週10時間以上働く障害者も実雇用率にカウント

実雇用率の算定対象となる障害者の範囲が拡大されます。

障害者雇用率制度では、事業主に対し、従業員の一定割合以上の障害者の雇用を義務付けています(図3参照)。

図3:雇用すべき障害者数の計算方法

(常用労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5)× 法定雇用率

※週の所定労働時間が30時間以上の人を常用労働者、20時間以上30時間未満の人を短時間労働者と言います。

※計算結果の小数点以下は切り捨てます。

障害者である労働者のカウントにおいては、重度身体障害者・重度知的障害者は1人を2人分としてカウントし、短時間労働者(週の労働時間が20時間以上20時間未満)は0.5人分としてカウントします。

現在、雇用義務の対象となっているのは、週所定労働時間が20時間以上の障害者ですが、4月以降は、週の所定労働時間10時間以上20時間未満の「精神障害者」、「重度身体障害者」、「重度知的障害者」についても、雇用率において0.5人分としてカウントできるようになります(図4参照)。

図4:雇用率制度における算定方法(青枠を追加
週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満 10時間以上20時間未満
身体障害者 1 0.5
重度 2 1 0.5
知的障害者 1 0.5
重度 2 1 0.5
精神障害者 1 0.5※ 0.5
※特例として当分の間、0.5ではなく1とカウントする。

4月障害者雇用率の引き上げ

4月1日より、民間企業の法定雇用率が2.3%→2.5%となります。これまで従業員数43.5人()以上の企業は障害者を1人以上雇用する必要がありましたが、この改正により従業員数40人()以上の企業が対象となります。

)一部業種では除外率が設定されており、これより多くなります。

10月パートタイマーの社会保険、51人以上の企業も義務化

以下の要件を満たすパートタイマーについて、段階的に社会保険の加入が義務化されています。現在は従業員数101人以上の企業が対象ですが、10月以降は51人以上の企業も対象となります。

  • 週の所定労働時間20時間以上
  • 月額賃金8万8千円以上
  • 2ヵ月を超える雇用見込み
  • 学生以外

社会保険料の負担が増えることになるため対象者を洗い出して試算しておきましょう。
対象となるパートタイマーに事前に説明しておくことも大切です。

(公開日 : 2024年01月22日)
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