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複数の仕事をする高齢者の雇用保険の特例とは?

(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所


Q.複数の仕事をしている高齢者が雇用保険に加入できる特例が始まると聞きました。どのような仕組みなのでしょう?

A.65歳以上の労働者について、1ヵ所の勤務だけでは労働時間が足りず、雇用保険に加入できない場合を救うため、複数の勤務を合計して週20時間になるときは、雇用保険に加入できるようになります。


1.特例高年齢被保険者の創設

雇用保険の被保険者になるには、これまで、1つの事業所で週20時間以上勤務することが条件でした。また、複数の事業所で勤務する場合も、いずれかの事業所1ヵ所でのみ加入することになります。

しかし近年、政府が兼業・副業を推進するなかで、兼業等の者が多く、また収入が少ないなどから保護の必要性が高い65歳以上の労働者について、雇用保険の加入要件等の見直しが行われることになりました。

来年1月1日から、1ヵ所の勤務だけでは労働時間が足りず、雇用保険に加入できない場合であっても、次のすべての要件に該当する人が申し出た場合、その申出をおこなった日から雇用保険の被保険者になることができるよう法律が改正されます。これを「特例高年齢被保険者」といいます。

  1. ①複数の事業所(雇用保険を適用している事業に限る。以下同様)に雇用される65歳以上の者であること。
  2. ②1つの事業所における1週間の所定労働時間が20時間未満であること。
  3. ③複数の事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上のものに限る)における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること。

2.手続きはどこでするのか

特例高年齢被保険者の手続きについては、いずれかの事業主が、その人の合算した週の所定労働時間などの状況を把握し、各種の手続をおこなうことが困難と見られているため、通常は事業主がその事業所を所轄するハローワークにおこなうところ、その労働者本人が本人の住所を所轄するハローワークにおこなうことになります。


3.失業給付は

特例高年齢被保険者の失業給付は、高年齢求職者(一時金方式)で支給されます。

1つの事業所のみを離職する場合であっても、その事業所での賃金に基づき算出して支給されます。

また、自己都合の離職の場合は、現行制度同様に一定期間の給付制限をおこなった上で支給開始されますが、複数の事業所を一斉に離職する場合でその離職理由が解雇、自己都合など給付制限がかかるものと、かからないものがあるときは、受給者の負担を減らすため、給付制限がかからない方に一本化して給付することになっています。


4.介護休業給付などは

特例高年齢被保険者について、介護休業給付と育児休業給付は、複数の事業所のすべてを休業していることをもって支給することになります。1つは休業しているが別では通常勤務している場合、支給されないということです。

また、今般の特例の対象者について、原則として雇用安定事業等における各種助成金の算定対象とされません。助成金は毎年のように見直されますから、特例対象者がいる会社では、その都度確認する方がよいでしょう。


特例高齢被保険者の資格取得・喪失の流れ
(公開日 : 2021年11月29日)
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