診療報酬深堀りニュース

2022年度の診療報酬改定率はどうなる

(執筆者)株式会社MMオフィス 工藤高

1.間もなく2022年度改定率が決定される

2022年度診療報酬改定率は間もなく12月中旬以降に決定される。図表1は2000年〜2020年の11回に渡る改定率の推移である。「診療報酬本体−薬価」が折れ線グラフの「全体改定率」となるが、2000年0.2%→2002年▲2.7%→2004年▲1.0%→2006年▲3.16%→2008年▲0.82%→2010年0.19%→2012年0.0%→2014年0.10%→2016年▲0.84%→2018年▲1.19%→2020年▲0.46%となっている。2006年の▲3.16%が当時の小泉内閣による「医療崩壊」の引き金になったとされる過去最大のマイナス改定率である。

≪図表1 2000年〜2020年の診療報酬改定率≫

図表1 2000年〜2020年の診療報酬改定率

2000年を除くと2010年が診療報酬本体+1.55%引き下げ、薬価▲1.36%引き下げ、ネット(全体)で+0.19%と最も高い引き上げになっている。この改定は当時の民主党政権下で実施されたもので、特徴的な点は医科+1.74%のうち入院+3.03%、外来+0.31%と入院・外来別の改定率が示されたこと。また、医科については「急性期入院医療に概ね4,000億円程度を配分」、また、「再診料や診療科間の配分の見直しを含め、従来以上に大幅な配分の見直しを行い、救急・産科・小児科・外科の充実等を図る」とした。ただし、+0.19%という小幅なプラスに関して医療関係者の不満の声は大きかった。理由は民主党の一部の議員は総選挙前に大幅プラス改定を示唆していたからだった。そのエビデンスは当時のマニフェスト(政権公約)で「総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで今後引き上げる」としていたからだ。さらに「コンクリートから人へ」という民主党の政策全体へのスローガンも掲げていた。その後、自民党の安倍政権に変わったが、2016年改定以降はネットでもマイナス改定が続いている。

新聞に2022年診療報酬改定率に関する報道もではじめた。2021年11月29日の日本経済新聞社説では「医療改革を進める診療報酬の見直しを」として、「一般病院の62%が20年度に赤字となり、赤字病院の割合は19年度の53%から拡大」とした。しかし、「コロナ対策の補助金を加味すると平均で1321万円の黒字を確保しており、赤字病院の割合は47%に下がる」としている。診療報酬増額を求める日本医師会の意見には日経新聞は反対として、「診療報酬は診療行為の対価であり、患者の減少を理由に単価を上げるのは理屈に合わない。コロナという非常事態に対応する病院の経営を支えるのは補助金のほうが望ましい」と書く。

2.2022年改定の4つの基本的視点(案)が提示された

2022年度改定の点数の内容等は図表2のように中医協で議論されるが、改定の基本方針については社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定される。両部会では、改定の4つの視点として下記が提示されている。

≪図表2 診療報酬改定の流れ≫

図表2 診療報酬改定の流れ
<4つの基本的視点>
  1. 新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築【重点課題】
  2. 安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進【重点課題】
  3. 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
  4. 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

前回2020年度改定では、基本方針の一丁目一番地にあたる重点課題は「2」の「働き方改革の推進」であった。今回も2つの重点課題の1つにはなっているが、1番目は「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」である。コロナ対応のための臨時的な「感染症対策実施加算」(外来5点、入院10点)は、第5波がまだまだ落ち着いていなかった9月末時点で廃止された。医療現場からは時期尚早ではという戸惑いもあった。同加算は感染対策を行えばコロナ患者の受け入れの有無に関わらず、全ての医療機関で算定可能であった。同加算のように一律評価していた方針を、コロナ患者対応をしている医療機関への評価にシフトしたと言えよう。

3.2022年度診療報酬改定率の落とし所はどこか

感染拡大で延長されている2020年度改定の経過措置についても、重症度、医療・看護必要度や回復期リハビリテーション病棟入院料のリハビリ実績指数などの新基準の適用は、コロナ対応病院では2022年3月末までさらに延長とした。しかし、コロナ未対応病院では本年9月末で終了となり、明確な差をつけている。

コロナ患者の受入病院では20年度決算における医業本体の「医業利益率」は大幅に減少しているが、コロナ関係の補助金を医業外収益として加えると、日経新聞社説のように「経常利益率」は多くの病院でプラスに転じている。厚労省は11月24日に医療経済実態調査の結果を公表した。本連載でも取り上げた先日のWAM(福祉医療機構)の調査と同様に2020年度の一般病院の利益率はマイナス6.9%で、2019年度から3.8ポイント悪化している。大きな理由は新型コロナウィルスパンデミックによる外来受診控えや病床稼働率の低下である。

そこにコロナ関連の補助金を含めるとわずかに黒字のプラス0.4%に転じており、医療機関は補助金頼みの経営になっている。このように医療機関は厳しい経営環境にあるが、財務省や日経新聞は前述のようにプラス改定には慎重な姿勢を示している。12月20日頃に決定される2022年度診療報酬改定率をめぐって、これから財務省、厚労省、日本医師会等のステークホルダーの駆け引きは白熱する。最終的には看護職員と介護職員の給与引き上げを主張する岸田総理率いる内閣がどこに落とし所をつけるかだ。

※本稿は医療経営情報社「医業経営ダイジェスト12月号」の拙稿を加筆訂正したものです。

(公開日 : 2021年12月08日)
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