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1.カスタマーハラスメント対策 厚労省がマニュアル公表
2.4月より改正「個人情報保護法」 企業の対応チェックポイント
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
1カスタマーハラスメント対策 厚労省がマニュアル公表
令和4年2月、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しました。パワハラ防止のための措置が中小企業にも義務化される中、顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆる「カスタマーハラスメント」)に関しても積極的に取り組むことが望ましく、対策は急務であるといえます。
ここではマニュアルの内容を簡単にご紹介します。
① 2割の企業で顧客からの迷惑行為
厚生労働省の調査(注1)によると、パワハラ、セクハラ等について過去3年間に相談があったと回答した企業割合は、パワハラ(48.2%)、セクハラ(29.8%)、カスタマーハラスメント(19.5%)の順でした。顧客からの迷惑行為に悩む企業、労働者は少なくなりません。
(注1)「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」
② 企業の判断基準を明確に
顧客等の行為への対応方法は、企業ごとに違います。一定レベルを超えた場合に、悪質であるとして毅然と対応してる企業もあれば、顧客第一主義の中で「お客様が納得いくまで対応する」との基準を設けている企業もあります。
業種や業態、企業文化などの違いから、カスタマーハラスメントの判断基準は企業ごとに違いが出てくる可能性があるため、各社であらかじめ判断基準を明確にした上で、企業内の考え方や対応方針を統一し、現場と共有しておくことが重要です。
④ 対策の必要性
カスタマーハラスメントによる従業員への影響は、精神的な負担が大きく、業務のパフォーマンスの低下をはじめ、深刻な場合には健康不良や精神疾患を招き、休職や退職につながるケースもあります(下記グラフ参照)。
事業主として適切な対応をしていない場合、被害を受けた従業員から責任を追及される可能性もあります。企業にとってカスタマーハラスメントに対して十分な対応をとることの重要性が理解できます。
⑤ 具体的に取り組むべき対策
企業がカスタマーハラスメント対策の基本的な枠組みを構築するために、まずはカスタマーハラスメントを想定した事前の準備、実際に起こった際の対応として、以下の取組を実施するとよいでしょう。
カスタマーハラスメントを想定した事前の準備 |
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カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応 |
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職場におけるカスタマーハラスメントをなくす旨の方針を明確にし、トップ自らが発信することで、企業が従業員を守り尊重しながら業務を進めるという安心感が、従業員に育まれます。
⑥ 企業のメリット
カスタマーハラスメント対策に積極的に取り組む企業では、複数のメリットが確認されています。業務において経験が蓄積されることで、迷惑行為への対応がスムーズになった、迷惑行為をする顧客等が来なくなった、従業員が明るくなった、といったものが見られます。
カスタマーハラスメント対策を進めることで、マイナスの影響を生じさせないだけでなくプラスの効果が期待でき、カスタマーハラスメント対策に取り組む意義は大きいと考えられます。
24月より改正「個人情報保護法」 企業の対応チェックポイント
令和4年4月から、個人情報保護法が改正されています。
個人情報保護法とは、個人情報の適正な取り扱いルールを定め、個人の権利と利益を保護することを目的としたものです。
① 主要な改正点
今回の主な改正内容としては、個人情報の利用停止を請求できるケースが拡充されたり、事業者に情報漏えいの際に報告を義務付けたりと、個人の権利を保護する内容が盛り込まれています。
たとえば、現行法では、目的外利用などの法違反があった場合に個人情報の消去等を事業者に請求できますが、この権利が拡充され、利用する必要がなくなった場合などにも請求できるようになります。
② 事業者が取るべき対応とは
個人情報を取り扱う事業者は、改正内容を正確に把握し、必要な対応を進めましょう。
個人情報保護委員会は、中小企業向けに下表のような「改正個人情報保護法対応チェックポイント」を公表しています。
改正対応チェックポイント |
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※(1)~(3)が優先される対応です。