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規定の準備は出来ていますか?
10月から育児休業が大きく変わります
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
育児介護休業法が改正され、段階的に施行されています。今年10月からは、今回の改正の本丸である「産後パパ育休」や「育児休業の分割取得」が始まります。今回の改正は男性の育休促進が中心となっており、夫婦で協力し交代しながら柔軟に育児休業を取得できる仕組みとなっています。
これまで育児休業は女性社員がまとまった期間取得するケースが多かったと思いますが、今後は男性社員も育児休業を取得し、夫婦で交代して何度も取得するという人も出てくるでしょう。改正後の制度をよく理解しておきましょう。
10月から大きく変わるのは次の3点です。
1産後パパ育休の創設
2育児休業の分割取得
31歳以降の延長の柔軟化
順に見ていきましょう。
1産後パパ育休の創設
通常の育児休業とは別に、子の出生直後8週間以内に4週間まで取得できる「出生時育児休業」が創設されます。女性であれば産後休業にあたる期間ですから、基本的に男性が取得する休業ということになり、「産後パパ育休」などと呼ばれています。
現行の育児休業ももちろん出生直後に取得できますが、新制度では、より男性が取得しやすくなるようにさまざまな条件緩和がおこなわれています。
① 申出ルール
産後パパ育休の申出は2週間前まででかまいません(通常の育児休業は1ヵ月前まで)。ただし、雇用環境の整備などについての取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1ヵ月前までの申出とすることができます。
また、2回に分けて取得できるため、まとめて休むのが難しい場合でも繁忙期を避けて取得することが可能です。ただし、2回に分けて取得する場合でも、まとめて2回分を一度に申し出る必要があります。
② 休業中の一部就業が可能
休業中に一部就業することも認められています。
通常の育児休業でも、トラブル対応など一時的・臨時的なものに限り休業中の一部就業が認められていますが、産後パパ育休では一時的・臨時的なものに限らず就業が認められます。
ただし、労働者の意に反して働かせることがないよう、あらかじめ労使協定を締結した上で、労働者と使用者が個別に合意した範囲内で就業が可能になります。
就業できる日数・時間数には上限があります(休業期間中の労働日・所定労働時間の半分まで)。なお、就業日数によっては、雇用保険の給付金と保険料免除の対象とならない可能性があるので注意が必要です。
④ 産後パパ育休の対象者
産後パパ育休の対象者は、産後休業をしておらず、産後8週間の子と同居し養育する人です。ただし、勤続1年未満の人などは労使協定を締結することで対象外とすることが可能です。
また、有期雇用労働者については、子が生まれてから約8ヵ月(注1)までの間に契約が満了することが明らかでない場合に産後パパ育休の対象者となります。
(注1)正しくは「子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日から6ヵ月を経過する日」
⑤ パパ休暇の廃止
現行制度にある「パパ休暇」(子の出生後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合、2回目の育児休業を取得できる制度)は廃止されます。
2育児休業の分割取得
これまで原則1回だった育児休業を、2回まで分割して取得できるようになります。男性の場合は「産後パパ育休」もあわせると最大4回の分割取得が可能です。
現行制度にある「パパママ育休プラス」(夫婦がともに育児休業を取得する場合は1歳2ヵ月まで休業を取得できる制度)は、改正後も変わらず利用できます。
① 申出ルール
申出期限などは現行の育児休業と同じで原則1ヶ月前までです。
産後パパ育休のように2回分まとめて申し出る必要はありません。分割取得する場合はその都度1ヵ月前までに申し出ればよいとされています。
31歳以降の延長の柔軟化
保育所に入所できない等の事情があって1歳以降も育児休業を延長する場合についても柔軟に取得できるようになります。
これまでは延長後の育児休業開始日は1歳時点、1歳6ヵ月時点に限定されていました。改正後は、本人と配偶者の育児休業に切れ目がなければ、各延長期間の途中でも夫婦で交代して育児休業を取得できるようになります。
① 申出ルール
申出期限は現行制度と同じで原則2週間前までです。ただし、申出が1歳(または1歳6ヵ月)到達後の場合は1ヵ月前までとなります。
●育児休業給付金も変わる
雇用保険の給付金も「産後パパ育休」や「育児休業の分割取得」にあわせて受給できるようになります。金額などは変更ありません。
休業の管理が煩雑になりますが、誤った取り扱いをしないよう改正後の制度をよく理解しておきましょう。